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サンタクロース談義

2012.12.25

スペインと一般人(近所に住む女の子)の会話。西ロマ。

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無意識にふれる

2012.03.27

 ロマーノがアレルギーになった、とスペインは言った。唐突に家を訪ねてきたかと思えば、それだけを言って、普段は朗らかに緩められている唇を引き結び、宙をひたすらに睨み付けている。フランスは何を馬鹿なことをと肩を竦めたが、仕事が終わっていないとも、この後はデートの約束があるのだも言っているのに、黙り込んだまま玄関先からぴくりとも動こうとしないスペインの様子に、仕方なく家の中へ上がるようにと勧めることにした。コーヒーを淹れるから先にリビングへ行っていてくれと声をかけてもスペインからの返事はなかったが、勝手知ったる悪友の家、その足先は廊下の奥へと向かっていたので、今度こそやれやれとため息を吐いてキッチンへ引っ込む。
 マグカップを二つ持ってリビングへと行くと、玄関先で見た時と寸分違わぬぶすくれた顔でクッションを抱きかかえたスペインがソファに座っていた。ひどい顔、と言いながらカップを渡す。
 熱いコーヒーに息を吹きかけて冷ましながら、さてどうしたものかと考える。先ほども言った通り、フランスは忙しかった。いっそのこと、ロマーノを呼ぼうか。いやいや、それでは面倒ごとを押し付けているだけか。しかし、今のスペインは目の前に神様がいたら掴みかかってケンカを売りそうな、そんな剣幕である。だいたいの彼は信心深くて良い奴だったが、そうでない時は性質が悪い。今は明らかに後者だ。これは、あまり関わりたくないなあと他人事のように思った。

「ロマーノがアレルギーになった」

 沈黙を破ったのはスペインだった。

「さっきも聞いた」

 だからどうしたのだ。残念ながら、いくら長い付き合いの腐れ縁と言えど、それだけでは事情を察してやることはできない。ちゃんと、なぜそうなって何に困っているのかを説明してくれないと、フランスには相談に乗ってやることもできないのだ。

「俺のアレルギーやねん」
「え、なに? どういうこと?」

 ちゃんと説明して、と言えば、負けん気の強い子どもが泣き出しそうな一歩手前で堪えているような、うぅと唸ってソファに沈み込む。ああ、これは。怒っているのではなく、泣きそうなのか。

「やから!俺のアレルギーやねん! 俺がさわったらロマーノ、かゆくなって肌が真っ赤になるんや! 長い時間、くっついとったら熱も出るし吐き気するって……そんで」
「ああ、はいはい。なるほど。わからないけど、わかったわかった」

 だんだん語尾が弱くなっていって、最後には消え入りそうな弱々しいものになっていく。決壊する前に手をひらひらと振って言葉を止めた。
 どういう原因だかわからないが、とにかくスペインがロマーノに触ると大変なことになるということは分かった。なぜ、スペインがフランスまでやって来たのかも泣き出しそうなのかも判明したも同然だ。

「それで、一緒にいたら我慢できなくなるから逃げてきたの?」
「我慢はしてる! そうとちゃうくて、わかってんのに勝手にさわってまうから」
「ははあ、なるほど」

 一緒にいれば意図せずに触れてしまうことはあるのかもしれないな、と思った。そうでなくともスペインは大雑把だ。ふとした拍子に腕や手が体に当たってしまって、ロマーノを苦しめてしまったのかもしれない。

「なんでそんなことになったの?」
「わからへん……けど、もう一週間もそんなんやで。医者に聞いても俺がロマーノの器から溢れたんやとか、なんかようわからんこと言われてごまかされたし」
「まあ、ごまかされたんじゃなくて、わかりやすく説明してくれたんだけどね」

 そもそも、冷静ではないスペインがアレルギーの原因をまともに理解する気があるのかどうかは疑わしいが、二人が知りたいのはそんな病気そのものの医学的な解説ではなかったのだろう。

「お前が引っ付きすぎたせい?」
「そんなん……」

 否定はされなかった。触りすぎたせいで特定の人物のアレルギーになるなど聞いたことはなかったが、何せ相手が幼少の頃からスキンシップ過剰で数百年と続けてきたスペインなので、完全にはないとも言いきれなかった。結局、国とはそういうものなのだ。普通の人間では起こり得ないエラーが、長く生きすぎたせいで起きてしまう。

「まあ科学的ではないけどね」
「……いや、うん、たぶんそうなんやと思う」

 癇癪を起こした拗ねた表情から、真面目な顔に変わっていた。瞼を伏せて落ち込む姿は珍しい。

「なんでそんなことになったのかはわかんないけど、暫くそっとしといたらその内また器の中が干からびて元に戻るんじゃない?」
「そんな簡単にいくんかな」
「わかんないけど、お前たちはそういうもんじゃん。いつも」
「……そもそも暫くそっとしてるのが無理やもん」

 だったらイタリアにいったん帰せば良いのに、とは口にしなかった。二人は今この状況でそれが思いつきもしないのだ。どうかしちゃってるんだろうなあと苦笑を零す。

「今は慣れないかもしれないけど、気をつけてたら触らずに生活できるよ」
「無理やって」

 眉を下げたスペインが間延びした情けない声を上げてソファに倒れ込んだ。珍しく弱音を吐くその姿に、大丈夫と繰り返して肩を叩き励ます。

「やって、寝てる時とかも、別々で寝てたのに気付いたらロマのベッドに潜り込んでて」
「ん?」

 スペインの言葉にフランスは首を傾げた。

「目が合えば勝手にちゅーしてるし、ご飯作ってくれてんの見たら肩をこう……抱き寄せてやなあ」

 実際に宙にロマーノの姿を思い描いているのだろう。腕が自然な形で人ひとり分を抱き締めるように動いた。その手のひらが背中を撫で、首筋を擽るような動きをして、あああ、と声を上げてゴロゴロと転がり出す。ロマーノー! と情けない声を上げるスペインを横目にフランスは心底、呆れて深く息を吐き出した。

「もういい?」
「俺ってそんなロマーノにさわっとったん? 全然気づかんかってんけど、街中でもやで! 普通に歩いてるだけで手繋いでもうて、そんなんやったんかなあ?」
「え、お兄さん言うよ、言っちゃうよ」

 きょとんとしたその顔に人差し指を突き付けて、宣言する。

「仕事が忙しい、デートの約束がある。のろけなら年中暇してるプロイセンのとこ行って!」

 本当にやってられない。

甘えている

2011.12.11

なあなあ、ロマーノと喧嘩してん、家に泊めてやー……って、え、あかんの? なんでなんで、けちー! 別に知らん仲とちゃうやんか、こぉんな小ぃこい頃からお守りもしたったし親と喧嘩して家出してきた時は匿ったったやん、なんでや俺らの友情はどこへいってもうたんや! ……って、はあ、彼氏。今日来るん? ふーん……彼氏、ねぇ。いやいや、まあな、君も大人になったんやから彼氏の一人二人おってもおかしないと思うよ。お前とは生まれた時からの付き合いやん。親分として恋人ができたって素直に嬉しいわ。ほんまやって、ほんまにそう思っとるよ。……でも、なあ。まさか、ほんの十年前までは手に負えないおてんばで近所の男の子泣かせてたあの子がなあ……って痛いいたい! ご、ごめんって悪かったって、つねらんといてぇ! ……ひーめっちゃひりひりするんやけどぉ。ほんっまひどいわ、相変わらず乱暴……いやいや、なんでもあらへんよ。ほんま彼氏ができたって言っても変わらへんねんから。……はあ? ロマーノとの喧嘩の理由もどうせ俺がいらんこと言ったからやろって? ちゃうわ! 全っ然ちゃう! 今回の喧嘩はロマーノが俺に突っ掛かってきたんが原因ですーなんで俺が無神経なデリカシーのない男みたいに言われなあかんねんな。何? その目は。……全くもう、フランスと言いイタちゃんと言い、みんなどうせ俺が悪いんやろみたいにあしらって、まともに取り合おうともせぇへんねん。意味わからんわ。もう、あれや。今日は絶対に何があっても家に帰らへん。ちょぉ寒いのは辛いけど我慢する。……えー、うーん、まあロマーノが謝ったら考えたってもええよ。やって、やってな、ちょっと聞いてや! ロマーノってばひどいんやで! 俺こないだロードバイク買うたんよ。ほしたら、ねっちねち女みたいに、なんでフランス製やねんって文句言ってくんねんもん。あいつやってビアンキ一筋とか言っとったくせに、こないだオニキスのバイクこっそり買ってってんで。まあ、俺んとこのもん買うてってくれるんは嬉しいけど……自分も気が変わることあるくせに、なんで俺にばっか文句言ってくんねん。ほんっま、意味わからへん。挙げ句の果てに買ったばかりやのに、こかしてフレームに傷が入ったんやで! あれは絶対にわざとやな。それ以外ありえへんわ。事故? ないない。あんなにこだわっとってんもん、その直後に通り道でも何でもないとこに置いとったもん倒すか? ありえへんわ……え? うーん、そりゃあまあ、ロマーノが突っかかってくるのはいつものことやし、俺があいつのこといっちゃん知っとるからわかるんやけど……それでも今回のは許せへん。って、自転車ごとき? 自転車ごときって言った?! めっちゃ大したことやろ! 自分やって大事にしとる薄い本傷付けられたらめっちゃ怒るやん、それと一緒やって……って、わかったわかった。こないだジュース零したんは謝ったやん、あれは事故やで事故…………。……ああ、そんなことで喧嘩するなんて俺らしくない、なあ。うん……いや、まあ、……せやねん。うん、そのー、自転車のこともあるんやけど、ほんまに家を飛び出してきたのはそれだけが原因とちゃうんよ。なんやろな……ロマーノも、さすがにちょっと悪いと思ったんかな。俺の機嫌を取ろうとしてくんねん。それがもうあかんかったって言うか……やって、おかしいやろ? 機嫌取るってことは悪いことしたなって自覚があるんやん。それやったら謝ったらええのにって感じやん。しかもそれが聞いたって! めっちゃあからさまやねんで。ご飯とかも何も言ってへんのに自分から作るって言い出して、俺の好きなもんばっかり。いつもやったら面倒やって言うのにデザートにティラミスまで用意して! こんなんあからさまやろ? それだけとちゃうでー俺のギター聞きたいとか、こないだ勧めた映画一緒に見ようとか言い出して……うん、まあ、その。ちょっと俺もええかなーって気分になっとったんやけど。たかが自転車やしって……ほしたらよ! ほしたら、にやにや笑っとるから何なん? って聞いたん! ロマーノ何て言ったと思う? 「ヴェネチアーノもデザート作って食べさせたら機嫌直すんだよな」って……って!! 普通、恋人とおる時にいっくら兄弟やからって他の男の名前出す? 信じられへん。しかも、イタちゃんに使った手と同じことされたってのが、なんかもう、めっちゃ腹立つねん! ……あー喋っとる間に腹が立ってきた! とにかく俺は絶対今回は折れへんで。ロマーノが反省して、ちゃんと何が悪かったかわかるまで、絶対に絶対帰らへんの! へ、なんでロマーノを追い出さへんかったかって? …………君も鈍いなあ、そんなんやったら恋人に呆れられるよ。じ、自分で考え! ほな、彼氏さんが来る前に親分はバルにでも行くわーまた今度、彼氏紹介してなー。

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