ただの恋人たちの愛の営みに深い意味はない

 その日、ロマーノはくすぶっていた。彼にとっては十年に一度ぐらいしかないんじゃないだろうかというほど仕事が立て込んで珍しく根詰めて働いたし、急に冷え込んだせいかやたらと人肌が恋しく堪らなかった。恋人と最後にふれ合ったのは三ヶ月ほど前。それ以来、彼とは連絡を取り合うことも儘ならない。せめて声を聞きたい。その一心で必死になって仕事を片付けた。まだ不備があるかもしれないからと言う上司の言葉を振り払い、休暇を半ば無理やりもぎ取った。
 
 
 
 スペインに会ったらまず何て言おう。いきなりの訪問だから、間違いなく驚くだろう。え、どないしたん? 忙しかったんとちゃうの? そんなことを言うスペインに普段はつまらない意地を張ってそっけない態度を取ってしまいがちだが、連日徹夜の書類漬けから開放されアドレナリンだかドーパミンだかが出っぱなしの脳内は今、奇妙なハイテンションでおかしくなっているし、今なら顔を合わせた瞬間に抱きついて会いたかったと言えるかもしれない。いつもとは違うロマーノにスペインはどんな反応を見せるのだろう。想像しようにもいまいちこれというものが思い浮かばなくて、早く会って言いたいと気が急いた。あらかじめ連絡を入れることはしなかった。そんなことはすっかり失念していたのだ。それほどまでにロマーノは疲れていた。
 だからスペインの家にやって来た時、はじめは彼の姿が見当たらなくて肩透かしを食らった。鍵は空いているし靴もあるから、そう遠く経は出かけていないのだろうが、家に着いたらすぐに会えるものだと思っていただけに残念な気持ちは大きい。がっくりと肩を落として項垂れる。こんなことならメールでも入れておけば良かった、そう思い至ってようやくロマーノは携帯電話を忘れてきたことを思い出す。これでは今どこにいるのかも聞けない。
 ロマーノは重い足を引きずって寝室へと向かった。すぐに会えないのなら、スペインが帰ってくるまで昼寝しよう。そう思い、ベッドを借りるつもりだったのだ。

「……ン、ぅ……っは、ぁ」

 だから、そう。家主が自身をひとり慰める現場を覗き見てやろうだなんて、断じて思っていたわけではない。むしろこんな事態は予想だにしていなかった。ロマーノは開きっぱなしの寝室の扉の前で固まってしまった。
 シエスタをするつもりだったのか、それとも起きたところなのか、シーツの上にあぐらをかいているスペインは上半身裸でスエットと下着をずらしている。その右手に握りしめられたペニスはすでに硬く張り詰めていて、堂々と存在感を主張していた。夕陽が差し込む寝室は静かだ。スペインの荒い吐息と規則的にモノを擦り上げる音だけが響く。乾いた摩擦音に混じって、時折、濡れた音が立った。それがやけにいやらしくて、ついにロマーノは声をかけるタイミングを失った。

「っは、ぁ……ん、ンぅ」

 そもそもスペインはセックスの最中にあまり声を出さない。人には、ロマーノのいやらしい声が聞きたいなあ、なんて言って声を上げさせようとしてくるが、スペインから漏れ聞こえるのはせいぜい何かを耐えるような息を詰める音か唸り声ぐらいだった。何度かロマーノから迫り主導権を握ったことはある。しかしそういった時もスペインは唇をぎゅうっと引き結び黙々と感じ入った姿を見せるだけだった。
 だからロマーノはスペインは声を出さないタイプなのだと思っていた。
 ロマーノ自身は口元が緩いとでも言うべきなのか、ひとりでしている時も勝手に声が出るし、スペインにふれられるとひっきりなしに喘いでしまう。だが世の中にはそうでもない人がいることも知っていた。スペインは挿入する側でもあるから、思わず嬌声を上げてしまうような感覚もないのだろう。元々、不感症気味だし。そう思って、あまり深く考えることはしなかった。
 それに、普段はうるさいぐらいに賑やかなスペインがセックスの最中だけ静かになることを、滑稽に思いながらも気に入っていた。スペインの意外な面を知っているのは自分だけ。あのスペインを黙らせられるのは自分だけなんだ、そう思うと言いようのない優越感もあった。

「っ、ぅ……っく、ぅ……っは、ァ あ……ッ」

 それなのに、どうだろう。スペインときたら、ひとりの時はうるさいぐらいに声を出しているではないか。
 鼻にかかった声が低く掠れ、甘い吐息に混じって漏れ聞こえるのはセクシーだ。何かを堪えるような、いつもとは違って余裕のない声音。それが湿った吐息に混じってひっきりなしに聞こえてくる。
 今まで静かだったのは、特に達する直前になると息を詰めてロマーノのうなじに唇を押し付けてくるのは、この声を堪えるためだったのか。

「は あ……は、っく……ぅ、あ……ロマ、ぁ」

 切なげな声。ずっと会えていないロマーノを求めるその呼び声は切実で、彼もまたロマーノのことを恋しく思っているのだろう。ロマーノはその声を聞いた瞬間、ついにキレた。

「スペインこのやろーちくしょー!!」
「ふぁっ?! え、あっ、ろ、ロマーノ?!」

 寝室に飛び込んで怒鳴りつければ、一瞬、アニメのように肩をびくつかせて飛び上がったスペインが自分のペニスを握りしめたまま目を白黒させた。ぽかんと口を開いて、ベッドの前に立つロマーノを見上げる姿はどこか間抜けだ。きっと何が起きているのか理解できていないのだろう。ロマーノはいきり立つ彼の性器を一瞥すると、足を思いきり前に踏み出して怒りを露わにした。

「テメー俺が必死で仕事片付けている最中に何勝手にマス掻いてんだッ!」
「へっ?! あ、あ、これは……!」

 ロマーノと自分の右手を交互に見たスペインが慌てて言い訳をしようとするが、そもそもここは彼の寝室である。浮気をしているわけでも、公序良俗に反した不道徳な行いをしているわけでもない。ひとりの時間に性欲処理をするぐらいの自由はスペインにだってあるはずだ。しかしふたりはロマーノの理不尽な怒りに疑問を挟む余裕もなかった。

「しかもアンアン喘ぎながら人の名前呼びやがって……あと、そういう声は俺に聞かせやがれ、ヴァッファンクーロ!」

 スペインの肩を掴み睨みつければ、なぜか彼の頬が一気に赤く染まる。頭に血が上った状態とはいえひどいことを言っている自覚はあったので、ロマーノは自分の言葉に彼が恥じらいを感じているのだと解釈した。しかし今はそんなこといちいち構っていられない。自分だって長い禁欲生活を強いられてきたのだ。もうこれ以上は我慢できないとイタリアを飛び出してきた。今すぐスペインがほしい。

「あっ、ちょ……ちょぉ待っ、ロマ……あかん!」

 制止をかけてくる言葉を無視して、ベッドに乗り上げてスペインを押し倒そうと体重をかける。身体が密着する。瞬間。

「ぅあっ! ちょ、も……っく、ぅ……ーーーッ!」

 スペインの身体が強張ったかと思うと大きく弛緩する。びく、びく、と肩を震わせながらゆっくりと吐き出される息。その反応は見覚えのあるものだった。ロマーノの鼻にツンと鼻腔を突き刺すような青くさい臭いが届く。視線を下げる。スペインの右手の中にあるモノが断続的に脈打ちながら、白濁した液体を吐き出していた。

「…………」
「……っは、ぅ……は、はあ……あ……ご、ごめ」

 肩で息をつくスペインが居た堪れなさそうに目を逸らす。彼の左手は所在なさげにシーツを掴んだ。右手はおそらく精液がロマーノにかからないように押さえたせいだろう、ベタベタに汚れていて手首まで液体が滴り落ちている。先ほどまで天に向かって猛々しく勃ち上がっていたペニスが、吐精したばかりだというのにすっかり萎んでしまって重力に従い崩れ落ちる姿は情けなく、それが余計にロマーノの怒りを煽る。

「……誰が今イって良いっつった……」
「へ? あ、いや、久しぶりにロマーノの顔見て匂い嗅いだら、つい……」
「あん? 誰の許可を得てイきやがったんだって聞いてんだよ、ちくしょー! 無駄玉撃ちやがってスペインこの野郎! テメーの精液は残らず俺の中で搾り取られてりゃあ良いんだ!!」
「そんな無茶苦茶な……!」
「うるせぇ!」

 スペインの肩を押して覆い被さる。不意打ちを突かれたせいか、彼は呆気なく押し倒されてシーツへと転がった。構わずその腹の上に乗っかって、上から見下ろす。

「俺のこと抱けよ……」

 地を這うような低い声で脅迫してくる恋人に、スペインの顔が一気に青ざめた。

 ああ、神様。これは一体どういうことでしょう。

「ッぁ、あ ン、あっ……っは、ァ」

 スペインは涙目になりながら生殺しの状況を耐えていた。
 自分に跨った可愛い恋人は、まずスペインの服を全て取り払うと下着もスエットもベッドの下に放り投げた。それからシャツのボタンを外し肌蹴させると、履いていたジーパンと下着を潔く脱ぎ捨てて身体を密着させてくる。シャツは完全には脱いでいないから邪魔ではあったが、直接ふれ合った彼の肌に自然と体温が上がっていく。先ほど事故的に達してしまったが、スペインもロマーノとふれ合えない間、欲求不満を募らせていた。それが今はこんな至近距離にいるとあって一度は萎えた性器が力を取り戻すのも時間の問題だった。
 しかし動こうとするスペインをロマーノは制した。それだけで人を殺してしまいそうな殺伐とした目で睨みつけられ、良いからお前は黙って見てろ……、と脅されれば、いくら空気の読めないスペインでも黙らざるを得ない。下手に刺激してロマーノの機嫌を損ねても困る。いや、もうすでにこれ以上ないぐらいに損なわれているのか? とにかく触らぬロマーノに祟りなし。彼の好きにさせるしかない。
 そうやってスペインのことを黙らせたロマーノは身体を密着させた体勢のまま片手をスペインの体の横に付き、もう片方の手を後ろに回した。仰向けに寝転がされ上にロマーノが覆いかぶさってきている状態なのでスペインには何が起きているのか見えなかったが、しばらくごそごそしていたかと思うと、ぐちゅ、と濡れた音が聞こえて息を呑むはめになった。ン、ロマーノの息を詰める声。あろうことか彼はスペインの手を一切借りず、自分ひとりで自身の後ろ孔を解し始めたのだ。その間、スペインに命じられたのは黙ってみてろという信じられない指令である。
 それからずっとこの生殺し状態が続いている。すぐ目の前にいるロマーノの身体を抱きしめることもできず、自分の上で喘ぐロマーノを黙ってみていることしかできない。

「っは、ァ……ン、ぁ、あぅ」
「ろ、ロマぁ……」

 耐えきれなくなって彼の名を呼ぶが、ロマーノは熱にうっとりと蕩けさせた視線を向けてくるだけで何もさせてくれない。おそるおそる手を伸ばしてみるが、彼の身体に届く前にパシリと叩き落されてしまった。

「こんなんひどい……せっかく久しぶりに会うたのにぃ」

 なりふり構ってられなくて泣き言を漏らす。ロマーノのドロドロに溶けたはちみつのような瞳が楽しそうに弧を描いた。恋人がお預けを食らって悶ているのに嬉しそうにしているなんて、なんて悪趣味な子なんだ。一体誰がこんな風に育てたんだ……って、それはスペイン自身である。

「っは……ぁ、なあ、さわりてぇの?」

 よほどスペインの目がギラついていたのか、やべぇ目しているぞ、と指摘されてしまった。ニヤリ、挑発的に笑うロマーノを警戒する余裕なんてない。

「もちろんやん!」
「俺の言うこと聞けるか?」
「何でも聞いたるよ、いつもそうしているやろ?」
「どうかな」

 もったいぶった言い方で焦らしてくる。ああ、もう早く早く。今すぐにでもさわりたいのに。頭の中がそれで埋め尽くされていく。

「じゃあ、ちょっと手ぇ貸せよ」

 言われるがままに右手を差し出せば、その手はロマーノに掴まれて彼の下腹部へと導かれた。期待感が募り、自然と脈拍が上がっていく。まだ何もしていないのに息が荒くなる。

「ンぅ……っは、あ……良い、か? 勝手に動かすんじゃ、ねぇぞ」

 ロマーノが腰を押し付けてきた。スペインは思わず目を見開く。そのまま彼はスペインの手に自身を擦り付けるかのようにぐいぐいと腰を動かして、前後に揺れだす。ロマーノの膝の下のシーツが皺をつくり、ざわざわと衣擦れの音を立てた。相変わらず片方の手は後ろに回されたまま、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てている。

「あっ、あ……ァ! これ、やっば……ァ、ンぅ」

 こぽり、先走りだろうか。ぬるりとした液体がスペインの手を濡らしていった。それから断続的にぬるついた粘液が漏れ出す。ロマーノは堪らないといった風に背を丸めて蹲った。それでも揺れる腰は止められないのか熱心に押し付けてくる。ふれ合った肌が熱い。不規則に漏れ聞こえる吐息はいつもの嬌声と比べると抑え気味だが、その分、鼻にかかった声が艶めいて聞こえた。それにさっきからロマーノの匂いがどんどん強くなってきていて、スペインの興奮を煽ってくる。

「あかん、ってぇ……ロマ、親分のこれもう……」

 ゆらゆらと揺れる腰を掴んで彼の脚の間に自身を擦り付ける。ロマーノがいかに興奮しているかを見せつけられて、こんなにも密着していて、我慢できるはずがなかった。すっかり張り詰めたペニスは先ほど自分で慰めていた時よりも成長している気がする。それにすっかり切羽詰まっていて、肉芯がダラダラと濡れそぼっていた。

「あ、ンぅ……なっに、しやがる。勝手に、ぁ……動くなって言っただろ」
「せやかて……」

 お咎めを食らうが、これ以上、彼の言葉を聞いて大人しくしていられる自信はなかった。身体を捩ってスペインの腕から逃れようとするロマーノの腰を抱きしめた。あっ、鋭く声を上げたロマーノに睨みつけられるが、彼もまた熱に浮かされ潤んだ瞳をしているためもう怖くも何ともなかった。それに頭の中は今やそれどころじゃないほど目の前にあるこの身体を貪ることでいっぱいになっている。彼が散々慣らしたこの胎内に自身を埋めて、熱く蕩けた襞をガツガツと突いたらどれほど気持ち良いか、すでに知っているのだ。

「……あかん、ロマ、ごめん!」
「へ、ぁ?! って、ちょ……あ、ァ、ああ!」

 腰を強引に引き寄せると、その拍子に後ろに回されていたロマーノの手がバランスを取ろうとシーツを握りしめた。構わず下から一気に突き入れると、ずっと聞きたかった余裕のない声が上がる。ロマーノの身体がガクガクと震えて崩れ落ちそうになる。彼の胎内はスペインが夢想していたものよりもずっと熱く、やわらかかった。自身が包み込まれる心地の良い感覚に精液が出そうになるが、腹に力を込めてどうにか踏みとどまる。だが、あまりもちそうにない。さっきイったばっかやのに、苦笑する余裕もなくて、彼の中が馴染むのを待たずに腹筋を使って腰を突き上げた。

「あっ、あ、ああァ! な、何これ……ッ! あぅっ、あっや、あァ ま、待って……ぇ、スペ……、あぅ……あ、あァン!」
「……っふ、ぅ……く……ッ」

 胎内の襞がスペインの性器に纏わりついて搾り取るかのようにうごめく。それが信じられないほど気持ち良くて、誘われるままに腰を動かせばロマーノはもはや自分で自分の身体を支えられないようで、スペインの胸板にしなだれかかってきた。力の抜けきったロマーノの両腰を掴んで、下からガツガツと突き上げる。彼はされるがままに揺さぶられながらひっきりなしに喘ぎ声を上げた。

「あ、ぅ……あ、あァ も、こわァ……ッ! あァあーーーッ!」

 ロマーノの肩が震えている。それと連動するかのように胎内が弛緩してスペインのペニスをきゅうきゅうと絞め上げてくる。ぐん、と腰を突き上げると彼の悦いところを突いたのだろう。ロマーノが、ひゅうっと息を呑んで声すら上げなくなった。腰を引いて性器を引き抜けば、ペニスの膨らんだ部分が捲れるほど圧迫されてスペインの腰を痺れさせていく。頭の中が真っ白になる。

「っぅ、っく……あ、ロマ……ッ! ロマーノ……!」

 彼の身体をきつく抱きしめた。脚も絡めて全身を密着させる。身動きの取れなくなったロマーノは全身を痙攣させながらすべてをスペインに委ねてくれた。一気に高みへと押し上げられた快感が腰に集まってきて急き立てくる。スペインはその感覚に抗うことなく、今度こそロマーノの胎内に精液を吐き出した。
 視界が一瞬閉ざされる。ロマーノの吐息と彼の匂い、体温だけが世界のすべてだった。
 どれぐらいそうしていただろう。全身を痺れさせるような甘い快感の中に身を委ねていたスペインはふと我に返った。じわじわと血が巡りだし、思考が取り戻されていく感覚がある。心地の良い気だるさを感じる。

「っはあ、はあ……ロマ……?」

 その時になってようやくロマーノがやけに静かなことに気がついた。慌てて抱き込んでいた身体を離し、その顔を覗き込む。ロマーノは虚ろな瞳を瞬かせていて、意識があるのかも怪しかった。潤んだ瞳に悩ましげに寄せられた眉、赤く熟れた頬と緩やかに弧を描く唇……どれもこれも艶かしく、達したばかりだというのに再びスペインの性器は力を取り戻そうと熱を帯びてきた。あかんあかん、必死に振り払おうとするが、彼の身体は時折思い出したかのようにびくついて、その度に胎内もうねうねとうごめき中に埋めるスペインにのことを刺激してくる。未だ絶頂の中にあるかのような身体の反応に思わず生唾を呑み込んだ。

「これは……どういう……」

 ハッとする。そういえば腹に濡れた感覚もない。慌ててロマーノのペニスに手をやるが、彼の性器はすっかり萎えたように萎んでいて射精した様子すらなかった。ふれさせた手でふれてみるが、ロマーノの反応は芳しくない。

「…………堪忍やで」

 聞こえていないだろうが一応謝って、今度は腰を掴む。脱力しきった身体を上下に揺さぶると、あ、あ、と嬌声が上がった。彼の悦いところを狙ったわけでも本格的に動いたわけでもないのに蕩けきった顔を見せるロマーノに、スペインの体温が一気に上昇する。彼は後ろだけで達しているのだ。しかも未だその快感から抜けられていないのだろう。

「ロマ……ロマーノ、愛してんで……」
「ん、ぁ……あ、ァ、すぺ、いぃ、あぅ」

 二度、三度と再び腰を突き上げるとロマーノの背が弓なりにしなる。その身体をもう一度抱き寄せて、さらに腰を動かした。達し続けているところに刺激されて、ロマーノは堪らないといった風に身悶えた。相変わらずスペインを締め付けてくる胎内は搾り取るようにうごめいていて、まだ足りないとばかりに収縮を繰り返している。
 誘ったのはロマーノのほうだし、無駄撃ちするなと言われたし……誰に聞かせるでもなく言い訳をしながら、上半身を起こす。体勢が変わって挿入の角度も変わったのだろう。ロマーノが再び喘ぐ。構わず身体を反転させてシーツに押し倒し上から覆いかぶさった。

「最後までちゃあんと責任持って犯したるからな」

 ニッコリと笑うスペインの表情をロマーノが果たしてちゃんと認識できていたのかは怪しかったが、それからふたりは夜が更けるまで愛し合った。
 
 
 
 ちなみにロマーノはその後もスペインを喘がせることはできないままだった。

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