ふれる、揺れる

 ふっと何かが背中に当たった気がして意識が浮上した。寝ぼけ眼でぼんやりしていたら、そいつはもぞもぞと毛布に侵入してくる。何かよくわからないけど暖かい塊が背中に密着して気持ち良い。思わず身をすり寄せてしまう。
 腹に回された腕にぎゅっと力をこめられて、ぼんやりとした頭でも何か変だと思いはじめた。

 何だろ、これ……気持ち良い、けど、はあはあ言っててうるせぇ……………

 はあ、っと熱い吐息が首筋にかかって異変に気がついた。瞬間的に鳥肌が立って、ひっと上がりそうになる悲鳴を喉の奥で噛み殺す。

「……ッ! …………スペイ、ン?」

 汗の匂いに混じってスペインが使っている柑橘系のシャンプーの匂いがした。反射的に息を詰める。先ほどとは別の意味で全身が粟立って、震えだしそうな体を抑え込むのに必死だった。じわりじわりと顔が熱くなるのがわかる。
 トクトク、と体のあちこちで脈打つ。静かすぎる部屋に自分の心臓の音が響き渡るような気さえした。
 体を強張らせながら様子をうかがっていると、穏やかな呼吸が耳のすぐそばで聞こえる。よく知ったそのリズムと体温に慣らされた体が、俺の意思とは反対に安心してしまう。

 ああ、やばい。かなり眠い。

 昔からスペインとは一緒に寝ることが多かったから、条件反射のように眠気が蘇ってくる。再びうつらうつらとしていたら、背後でもぞもぞと身じろぎをしていたスペインも寝やすい場所を見つけたのだろう。ほうっと息を吐いて収まった。
 勝手に抱きついてくるじゃねぇ、と文句を言いたいのは山々だったが、半分眠りに落ちかけている今、指先ひとつ動かすことさえ億劫だった。何よりふれ合っているところが気持ち良くて、理性が働いてくれそうにない。
 スペインが呼吸する度に、あいつがよく飲んでいる酒の匂いがした。
 たぶん寝ぼけているんだろう。相当酔っているようだったから、誰を抱きしめているのかもわかっていないのかもしれない。何なら酒に酔ったせいで、俺がガキだった頃に一緒に寝ていた癖が出たのかも。
 ここで下手に騒いで、また意識しすぎだとヴェネチアーノ達に呆れられるのも恥ずかしい。いつものことでしょ、と生ぬるく笑われるのは不本意だった。
 明日早く起きれば良いと早々に諦めて、抱きしめられるまま身を委ねることにした。体から力を抜けば心地よいまどろみが訪れる。
 そうだ、もう眠ってしまおう。そっとまぶたを閉じる。すると―――。

「……うぁ、っ!」

 大きな手のひらが胸にふれた。驚きのあまり漏れそうになった声を必死で押さえ込んで、恐る恐る背後の気配に集中する。スペインの姿は見えないが、その手は確実に動いている。
 裸のせいで直接ふれられる手の温度に、悪寒と紙一重の寒気が背筋を駆け抜けていった。

「……ふ、ぅ……っ、……く」

 口もとを手のひらで覆うが、勝手に荒くなっていく呼吸が漏れそうになる。そうこうしている間にスペインの手は広げられ、大人になっても薄いままの俺の胸筋を撫で回していく。
 信じられない。なんでスペインが俺のことを、なんで、なんで……?
 頭の中が真っ白になって、まとまりのない言葉がぐるぐる回る。まともに思考なんて働かなかった。

「ひ……ぅ、ぁ……うぅ」

 いつもみたいに振り払いたいのに動けない。どうしてこんなことをされているのかはわからなかったが、きっとからかわれているんだって、そうじゃなかったら誰かと間違えているんだって、思ったら悔しくて苦しくて耐えられなかった。なぜだろう。ずっと大事にしてきたものを踏みにじられたみたいな気になって、涙がこみ上げてくる。
 だって寝ぼけているとはいえ、スペインに女にするみたいな扱いをされているんだ。なけなしのプライドも何もかもぐちゃぐちゃだった。
 ひどく惨めな気持ちになって、ぐすぐすと鼻を鳴らしながら息を詰める。水っぽい空気があたりを支配した。
 涙のせいで頭に血が上って冷静になれない。
 けれどスペインの指はそれ以上追ってくることはなかった。

「ふ……く、あ…………ぁ?」

 よくよく集中してみれば、スペインの手には力が入っていない。動きもどこかぼんやりしていて、手慰みに無意識のまま近くにあるものをまさぐっているだけのようだった。
 そう言えばヴェネチアーノも一緒に寝ている時に、腕や胸のあたりを撫でてくる癖があった。あいつは失礼な弟で、ふにふにと撫でた後しょんぼりしたような微妙な反応をしてくる。一回あれは何だったのかと聞いたら、ドイツの筋肉を探していたのかも、と言われたことがあって、何とも言えない微妙な気持ちになったものだ。……まるで俺の筋肉じゃ不足だったみたいじゃねぇか。
 きっとスペインも寝ぼけているんだろう。そんな理由で体をまさぐられたのは、きっと怒っても良いんだろうけど、まあ女みたいに胸があるわけでもない。放っておいたらその内離れるだろうと、後ろから抱きしめられる態勢のまま我慢してやることにした。
 同じ部屋には馬鹿弟だけでなく、髭やろうもムキムキのじゃがいも兄弟もいる。こんなところを見られたら堪ったもんじゃない。今度こそからかわれて恥ずかしい目にあうに決まっている。なるべく騒がず大人しくしているのが得策のようだ。

 しかし、スペインのやつめ。俺にまで手を出そうと(?)してくるとは、どんだけ欲求不満なんだ。

 いくら酒が入っていて寝ぼけているからって、男の、それも元子分である俺の胸を揉まなくたって良いじゃねぇか。明日はこれをネタに日頃笑われている分、盛大に馬鹿にしてやろうと心に誓う。
 込み上げていた涙はいつの間にか引っ込んでいた。

「…………」

 強引にまぶたを閉じて眠ってしまおうとする。
 しばらく反応を返さずにいると、スペインの手の動きが止まった。それがまた絶妙な位置で、乳首のすぐそばだったから変に意識してぞわぞわしたけど、必死で気にしないふりを続ける。

 もう何でも良いから早くどっかいけ! そこにおっぱいはねぇんだよ!

 頭の中で怒鳴りつけながら早く離れろと念じる。俺のテレパシーが通じるような男じゃないが、黙ってされるがままでいられる状況でもないだろう。

「んー……」

 スペインがもぞもぞと身じろぐ。寝返りを打ちそうな雰囲気を感じ取って少しホッとして力を抜いた。

「え……ッ!」

 思わず声が出そうになって咄嗟に手で口もとを覆った。スペインの手が再び動きだしたからだ。さっきまでのぼんやりした動きとは違う、もっと激しくて明確な意図をもったものだった。
 肋骨をなぞるように、するすると動く指。太くて長くはないあの指が、意外に器用に動くことは知っている。くるくるーっと、なんてふざけたことを言いながら造花を量産するぐらいだ。間違いなく俺には真似できない。
 広げられた手のひらが皮膚に押し付けられる。分厚い手のひら。ギターのネックを支え早弾きしてみせるのを何度も見た。あの手のひらに、ふれられている。太陽の手が俺の肌に―――。

「……ッ、ぅ、あ……! ふぅ……」

 自分で想像したイメージにぞくぞくして鳥肌が立った。感覚が高ぶったせいで余計にふれらたところから伝わる刺激が強くなる。
 へその周りをぐるりと撫でられ、脇腹へ、ツツツとくすぐられたかと思えば、腋のほうへ上ってきて際どいところをふれられる。スペインの硬い指の腹が、肌にふれるかふれないかのギリギリのラインで動くのに妙な気分にさせられる。

「っ、ぅ……!」

 スペインのセクハラを上手く処理できずパニックになっている間にも、ふらちな手は俺の体を探るのをやめない。そうこうしている内に肩や鎖骨を撫でられて、そんなところが気持ち良いなんて知らなかったぞ、とパニックになる。

 ~~~っ! こいつ、ほんとうに寝ぼけてんのかっ?!

 背後の気配を探っても混乱しているのもあって、よくわからない。どうにかスペインの拘束から逃れようと身を捩ってみるけど、がっつり抱きかかえられているせいで効果はない。
 もうこうなったら今すぐにでもスペインに目を覚ましてもらうしかなさそうだ。そして今体をまさぐっている相手が柔らかくて気持ち良い女の子ではなく、筋肉と骨しかない無粋な男の俺だって気づいてくれ! 頼むスペイン!

「んー……」

 びくっと体が跳ねた。飛び上がるかと思うぐらい驚いた。それもがっつり、スペインに抱き留められてしまったんだけど。
 ソファからヴェネチアーノの声が聞こえてきたせいだ。

「……なんだ、イタリア。目を覚ましたのか?」
「うーん……」
「寝ぼけているのか……」

 もぞもぞと寝返りを打っているような気配がする。嫌な汗が吹き出る。もしあいつらが目を覚まして、俺のこの状況を見たら何て思うんだろう。男同士で、しかも裸で抱き合って寝ているなんて、絶対おかしいって思うはずだ。どうしてあの時の俺は服を脱いでしまったんだと今さら後悔する。
 息を詰めて堪えていたら、ドイツとヴェネチアーノが何かを囁き合って、しばらくすると静かになった。じっと聞き耳を立てるが、起きだす様子は感じられない。
 ほうっと力を抜く。緊張していたせいで肩が凝り固まっている。

 そうだ、この部屋にはあいつらもいるんだ。

 下手に声を出したり暴れたりしたら、起こしてしまう。一度寝たら朝まで目を覚まさないヴェネチアーノは良いとして、ドイツやプロイセンはやっかいだ。プロイセンなんて背後を通っただけで殴りかかられることもあるらしい。……実際に見たことはないけど。本人がそう言っていた。
 室内は暗く、それぞれが寝ている位置は離れている。パッと見では何が起きているかはわからないだろうが、それでもそばまで寄られたらバレるに決まっている。

 誰かが起きたらどうしよう、こんなところを見られたら。

 声を出しちゃいけない。静かにしていないと。
 緊張するほど呼吸が浅くなっていくような気がした。一度意識し始めると、自分の息を吐く音すらうるさく思える。
 けれど、俺が混乱と不安で頭の中が真っ白になっているにも関わらず。寝ぼけたスペインの手は再び好き勝手をしだした。

「あっ……!」

 スペインの指先が縮こまっていた俺の乳首を掠めていった。びくり、肩が大きく跳ねる。
 ぎゅうっと腰に回されている左腕に力が入り、スペインが覆いかぶさるように圧しかかってきた。いよいよ身動きひとつ取れなくなる。

「んんー……」

 むにゃむにゃと寝言らしきものをつぶやいたスペインは、いかにも寝ぼけているようだ。しっかりと拘束してくる腕の中で、目を大きく見開き息をひそめる。
 ドキドキと鼓動が激しくなっていく。はっ、と吐く息が熱くなっていて、ごまかしがきかない。

「―――ッ!」

 スペインが俺の胸をまさぐりだした。今度はさっきよりも明確で、確かな意図を感じられた。

 っのやろう! 普段からこんなことしてんじゃねぇのか!

 はらわたが煮えくり返るようだ。いつもこうやって寝ぼけて、手当たり次第に女に手を出しているんじゃないかと疑うほど、スペインの手は的確に俺の乳首を弄っている。
 人さし指と中指で挟んだり爪の先で弾いたり。ぐりぐりと押し潰してきたかと思ったら、次の瞬間、優しく撫でられて鳥肌が立った。びくびくと肩が跳ねるが、抑え込まれているせいで身じろぎもできない。ただひたすら身を固くして、声を出さないように堪えることしかできなかった。

 くっそ……ぜってー、起きたら頭突きしてやる……っ!

 目をぎゅっとつむる。スペインに良いように翻弄されているのが悔しいし、恥ずかしい。明日の朝ちゃんと平気な顔をできるか、もはや微妙だった。
 不意に爪を立てられた。じくじくするような鈍い痛みと紙一重の、もどかしい感覚がせり上がってくる。そのまま引っかかれて摘ままれて、痛いのに悶えそうになる悪寒に泣かされる。
 血が腰に集まってくるのがわかって、本気で泣きそうになる。

「ぅ……ぁ、……っ!」

 自分でも信じられなかった。何が起きているのか、すぐには理解できずに呆然とした。
 だって俺のアレがそれでこうなってて……。
 明らかに毛布にふれるぐらいにまで勃ち上がっている。何がって、あれが。

「……っ! くっ……ぅ」

 今俺を抱きしめてんのは男で、育ての親みたいなもんで、ていうかスペインだしありえない。絶対にありえない。
 自分を萎えさせようと、必死になってスペインの姿を思い起こす。気の抜けた笑顔、どこまで本気なのかわからないあの表情。間違っても女には見えない、男くさい顔立ち。俺よりも遥かに逞しい腕やら胸やら。
 首筋に当たる生ぬるい吐息を意識すると、途端にぞわぞわと背筋が震えた。なのに、むしろ腰に集まる血は熱く迸っていく。

 なんで、どうしてだよ……?!

 男のものでしかない指先の硬い皮膚に神経を集中させれば、そこから生まれる感覚が鋭くなっていく。俺だって胸を弄られてこんなことになるなんて知らなかった。執拗に責められて、腫れているんじゃないかって不安になるぐらい、先っぽのところが熱を持っている。弄られすぎてちょっとの刺激にもどうしようもなくなるぐらい敏感になっていた。ふれられていないほうの乳首も、毛布が掠めただけでピリピリと電気が流れたみたいになる。
 こんなのまるで、スペインにさわられて喜んでいるみたいだ。

「っ……ぁ、!」

 腰を抱えていた腕が下に下りていく。俺が黙ってじっとしているのを良いことに、スペインは勃起しかけているそれを握り込んだ。
 ああ、もう信じられないことだらけだ。
 スペインの腰が、俺の腰に押し付けられる。固い何かが当たっている。泣きそうなのに、それにすら興奮するのか俺のものがスペインの手の中でさらに張り詰めた。
 ぞくぞくと寒気のような何かが背筋を這い上がってくる。それが嫌悪感ではないことには、良い加減気付いていた。

 やだやだやだ、こわい……!

 認めたくはないが、今確かにスペインが俺に欲情している事実に興奮している。こいつは寝ぼけているから良いものの、ばっちり起きて意識がある俺の場合は事故だろう。大事故だ。こんなことシャレにならない。
 いよいよ堪えきれなくなった呼吸が乱れた。ひゅっと喉が鳴る。
 スペインの手があちこちふれていく。俺のあれを握った手も緩やかに上下に動かされて、うなじに吸い付かれた。

「ぅ……ふっ、くぅ……」

 一度は引っ込んだ涙が再び込み上げてきた。今度は俺自身に起こった変化への恐怖と不安で、だ。
 俺は男にふれられても感じてしまうんだ。まるで変態みたいだ。
 鼻を鳴らすと、スペインの動きがピタリと止まった。

「ぅ……ぅっく……んぅ」
「……ロマーノ」
「ふっ……ぅ、え……あ?」

 嗚咽を漏らしていると、低い声で名前を呼ばれた。それに一瞬素に戻る。

「おまえ……なんで……」
「泣かんとってぇ……ごめんごめん、俺が悪かったから」

 お互い声量を絞っているせいか、ところどころ掠れて上擦った。

「……どういうことだよ」

 首筋やら耳たぶにキスをして宥めようとしてくるスペインに眉をひそめる。いやあ、なあ、と曖昧な返事をされた。

「ロマーノがあんまり可愛えから、つい」
「……おっ、お前の可愛いってそういう意味かよ……ッ!」
「ちょ、静かにしてや……!」

 口を手で塞がれて、もがもがと不明瞭な音しか出せなくなる。俺はと言えば戦慄で震えるしかできなかった。

「そういう意味っていうか、まあ……うん。普通に可愛えって思っとったこともあるで。でも」

 一気に言いきったスペインが低い声で囁いた。

「でもなあ、しょうがないやろ」
「どういう……」
「こんな。俺のこと意識しまくっている可愛え子、何とも思わんわけないやん」

 言いながら胸もとを悪戯に弄られて、んっ、と息を詰める。すっかり立ち上がった乳首を今度は優しく撫でられた。ヒリヒリとした痛みすら感じ始めていたのに、しつこく快感を拾い始めるから堪らない。唇を噛みながら息をひそめる。

「ここまでされて大人しくしているなんて、ロマーノらしくないなぁ。……俺、勘違いしてまうよ」

 優しくて甘ったるい声に囁かれて落ち着かない。スペインこそ、スペインらしくなかった。低く静かに話すのに、どこか真剣な声色が気まずくてムズムズする。そのくせ心臓はドキドキとして、俺もおかしくなっていた。
 腰に回された腕に力がこめられる。さっきから当たっているスペインの硬いあれが、ぐりぐりと押し付けられて悲鳴を上げそうになる。

「ロマーノにさわってると気持ちええねん」

 腰にクる、と囁かれた。自分でも腹が立つぐらいスペインの良いように翻弄されている。

「なんで……」

 答えのわかりきった質問をしてしまうのは、俺がまだガキだからなのか。スペインがくすくすと笑っている。

「なんでやと思うー?」
「し、知るかよ」
「ロマーノがここまでされても逃げへんのと同じやで」

 俺は関係ねぇだろ!
 と、いつもなら怒鳴るところだ。馬鹿弟やフランスの髭やろーにからかわれても知らんふりをしてきたのと同じように、わかんねぇよってはぐらかせばそれで終わり。
 けれど、実際に勃起してしまっているのは逃げられない事実なわけで。

「……な、なあ。その、俺ってやっぱり、お前のことが……その」

 恐るおそる訊ねれば、スペインが、あー、と気の抜けた声を上げる。それに、こいつの鈍感で空気読めない性格に隠されていた本音が滲み出ていたような気がした。

「……まだ認めたくないん?」
「わ、わかんねぇんだよ」
「わからんことないやろ。お前はいつもかしこいんやから」
「……だって、俺もお前も男だし、親分って言ってたじゃねぇか」

 家族のようなものだと思っていた。そう思わないと一緒にいられないんだと。なのに、今さら手を出されて、わかっているやろ、と迫られたってわからないものはわからない。
 明日からどうやって過ごせば良いんだよ。
 けれど、スペインはあっけらかんと言う。

「好きになったら関係ないやん、そんなこと」

 そんな風には思えないから悩んでいるというのに、俺の長年の苦悩をそんな言葉で一蹴する。何だかなあ、と思わなくもない。
 まあ、スペインってそういうやつだよな。じゃなきゃ、他のやつも雑魚寝しているところで手を出してきたりしないはずだ。

「だからって今こんなことしてくることはねぇだろ……せめて人がいない時とか、あるだろ」
「あー……せやなあ。ちゅーか今日はたままたロマーノが起きとったからあれやけど、今までも結構手ぇ出してたし……」
「はっ……?!」
「警戒心なさすぎやわぁ。ちょっとはプロイセン見習ったほうがええで!」

 通りで手慣れていると思った! 今までも俺の知らないところでこんなことしていたなんて、怒りでわなわなと震えだした肩を撫でられる。
 何だか今日は疲れた。スペインのやろーには良いように振り回されるし、からかわれるし。いきなり長年、自分でも無自覚のまま蓋をし続けてきた感情を認めろと迫ってくるし、最悪だ。頭の中はパニックで全然整理できてねぇ。
 はあっとため息をついていたらスペインが、感情の自覚はゆっくりでえよ、と言う。

「それより、なあ」

 するりと体を寄せてきて、俺の性器を再び握り込んだ。さっきの今で、これはないだろう。げんなりするのに、俺も相当あれなので元気になったまま収まりがつかなくなっているそれが、どく、と脈打った。

「抜いたるから俺のもええ?」
「こ、ここでかよ……!」
「移動している時間が惜しい」

 強引に迫ってくるこの男の最低な言い分に呆れながらも、結局俺は流されるんだろう。
 でもまあ、せめて。

「……せめてベッドに連れてけよ、この変態やろーが」

 人のことは言えないけれど、さすがにここではどうかと言えばスペインが参ったような苦笑を返してきた。

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