「ロヴィ、ロヴィーノ!」
ぺちぺちと頬を叩かれて瞼を開く。いつの間にか電気がついていた。
「ん……?」
「ロヴィーノ、俺がわかるか?!」
「…………」
「ロヴィーノ?!」
「……アントーニョだろ」
声が出にくくなっている。喉がちくちくとして眉を潜めた俺に、泣きそうな顔をしたアントーニョが「良かったあああ!!」と大げさに騒いで抱き付いてきた。さっきまでの静かで……かっこ良いこいつはどこへいったんだ。
「あの後、ふっと気を失うんやもん……壊してもうたんかと思った」
「な、に言ってんだ……」
掠れている声を無理やり絞り出すが、喋りにくくて仕方がない。
「……ロヴィーノ、何があったか覚えとる?」
そんなに長いこと意識がなかったのだろうか。俺の体はまだ汗も引いていないし、動悸も激しい。……まあ心臓はアントーニョの傍にいて穏やかだったことがなんてないけど。
「覚えている……」
きっとみっともない表情をしている。それが見られたくなくて目の前の肩に顔を押し付けた。
何があったかを覚えてはいるがいまだに実感はない。明日目が覚めて全部夢でしたって言われても、ああそうって思えるぐらいには頭がついてこない。だって今朝はまだ失恋したと思って絶望していた。
「……嘘みたいだ」
ぽつりと本音が零れた。嘘みたいで夢みたい。アントーニョの首に腕を回し、ぶら下がるような格好でいたらぴくり、と筋肉が強張った。
「嘘とちゃうで」
「……ん」
「ほんまにロヴィーノが好き」
「…………」
「ロヴィーノは? 言うてくれへんの?」
さて、言わなくたって十分知ってるだろうと言い返すのはかんたんだ。今のこの態勢見ろよ、でもいいし、出会ってからの一年間俺がお前を好きじゃなかったことがあるのか、でも。
けれど言われてみればはっきりと口に出してそうと告げたことがないのも確かだ。どうしたものかと逡巡している間も珍しくアントーニョは静かに待っていて、どうしようどうしよう、と考える。
「……」
顔を上げてアントーニョを見れば、小首を傾げて返される。ああ、くそ。可愛いな。
口をぱくぱくと開閉させ、大きく瞬きをひとつする間に覚悟を決める。そうだ、一年間の片思い。今朝の絶望感。それを思えばちょっと素直になるぐらい大したことじゃないはずだ。やっと思いが通じ合ったんだから、ちょっとぐらい。
「…………」
小さくて今にも掻き消えそうな俺の告白は、それでもちゃんと届いたらしい。でれでれに嬉しそうな顔をしたアントーニョに強く抱き締められることとなった。