それからは、決意したとおりスペインがロマーノを傷つけることはなかった。
相変わらずブーゲンビリアを見においでと誘ったり、知り合いの漁師からあさりをたくさんもらったからと頻繁に家に呼んだ。けれど、一緒にいるからと言って見境もなく抱くことはしなかった。ただ、目的もなく田舎道をふたりで歩き、トマトをかじって、ぼうっと丘の上から町を見おろす。まさにスペインが与えてやりたいと思っていた穏やかな時間を過ごした。
時々はロマーノからも、トマトの手伝いに来いだのマンダリンが大量にあるから取りに来いだのと呼びつけられることがあった。偉そうやなあ、と軽口を叩きながらも、それが不器用な彼にとっての甘えだと知っているから、締まらない笑顔でイタリアまで飛んで行って、会いたかったとハグをする。
何も特別なことはないはずの逢瀬は、いつもあっという間に過ぎていく。別れ際にはもう次に会う理由を考えていて、そうやって繋がっている関係も悪くはなかった。
セックスだけはしなかった。始めはロマーノから誘われたらどうしようかと思ったが、何てことはない。スペインが動かなければ、彼から何かを言ってくることも、仕掛けてくることもなかった。
(むなしいもんやで)
思い返しても彼から誘われたことはない。たいていいつも、スペインががっつくように抱いているのだから、そんな必要もなかったと言えばそうである。ただ、今でも何も言ってこないということは、求めていたのは自分ばかりだったと現実を突きつけられたようだった。
(まあ、ロマーノにとって楽しいもんではないやろうけど)
気持ち良いのかどうかすら怪しい。痛いばかりで本当はしたくないのかもしれない。真実を知ることはおそろしく、聞くことはなかったが。
そうやって何でもない時間を重ね、季節がひとつ巡った。
その穏やかな時間に終止符が打たれたのは冬の朝のことだった。
その日、スペインは自らの腹に重みを感じた。人がひとり、乗っかっているような重みだ。けれど、ゆうべは遅くまで騒いでいたので瞼が重い。何だ、と薄目を開きかけて、まだベッドに潜り込んでまだそんなに経っていないと言い訳をはじめる。まだまだ眠っていたい。往生際悪く、夢の端っこにしがみついて腕を振り上げようとして、そこで異変に気が付いた。
(腕が上がらん……)
二の腕に力を入れて腕を引くがベッドヘッドが軋んだだけで動かせない。力を入れる毎に手首に細い紐のようなものが食い込んでスペインの動きを拘束した
。これはおかしい、異変に気付いて目を開き慌てて体を起こそうとして、ギッという嫌な音が聞こえ、再びベッドへと戻された。
「なんなん?!」
「よお、起きたか」
目の前にはロマーノがいた。なぜかシャツを脱いでスペインの腹の上に座っている。
「へっ、な、なんで?! ロマーノ、今日、会われへんって……」
「悪いか」
「いや、悪いも何も……」
どうして家にいるのか、なぜ服を着ていないのか。混乱しきって、裸で恋人の寝ている上に乗っかったらあかん! と、検討外れのことを口走った。目をぐるぐると回しているスペインに、ロマーノはふっと笑ってキスをする。
ちゅっと軽い音を立ててすぐに離れていった唇を、ぽかんと府抜けた顔で見送った。スペインの呆気にとられたその表情に満足したのか、ロマーノは目を細めて微笑む。滅多に見られないようなきれいな笑顔に心臓がどきりと跳ねた。
「お前を襲いに来た。もうすぐ誕生日だろ」
「へ」
「プレゼントだ。嬉しいよな」
言ってにやっと笑った顔は、到底、スペインを祝ってくれる気があるようには見えない。子どもの時の、悪いことを思いついた時と同じ表情だ。それもとびきり性質の悪い、スペインを相当困らせてやろうと企んでいる時の。
頭上を見上げると手首がひと纏めにされている。考えなくたって紐で結ばれているのだろう。この状況で、それはないだろう。
「お、襲うって……ぅあ!」
スペインが言い終わる前にロマーノが耳たぶを食んだ。唇で挟まれ、ねっとりと舌に舐め上げられる。温いその温度にぞくぞくと背筋に悪寒に似たもどかしさが走る。しばらく軟骨をコリコリと遊んでいたが、スペインの反応に飽きたのか耳から離れていって首筋へと辿っていく。ぬるっとした舌が滑っていく。と、頚動脈で歯を立てられた。
「いっ……!」
「あ、わ、悪ぃ」
容赦のない力に体が強張った。反射的に手が出そうになったが、手を拘束されているために僅かに身を捩るだけで留まった。ロマーノは申し訳なさそうな顔でスペインのようすを窺っている。
「も、急に何なん?!」
「だから、襲いに来たっつってんだろ」
「俺、ロマーノになんかした? もしかして怒ってるん? 悪いことしたんやったら謝るから、とりあえずいったん手外そう」
「それはやだ」
必死で説得を試みたが、あっさり却下され肩を強く押さえつけられた。いくらロマーノが非力とは言え男のそれだ。上から押されれば、ちょっとやそっとじゃ抜け出せそうにない。まして、手の自由がきかない状況ではどうすることもできないだろう。状況が悪化したことに青ざめて、ロマーノが何をしようとしているのかその手の行く先を追いかける。
黙ったことで納得したととったのか、スペインの胸を手のひらで撫ではじめた。いつも冷たい手が熱くなっている。やわやわと肌の上を滑る手をじっと眺めていると、突然、乳首を強く抓まれた。
「ーーっ!!」
今度は声にはならない悲鳴を上げて、ただ痛みに悶絶する。ギッとベッドが叫んだ。拘束されながら暴れるスペインの力を受けてスプリングが軋む。ロマーノはそんな様子を見て取ったのか、慌てて両手を上げて何もしていないというポーズを取る。子どもの頃からいたずらや悪いことをした時にする癖だ。
(なんでこんなんするん?! 鬼やで! えっちしてる時のおれやあるまいし)
そこでようやく、これはいつもスペインがしていることだと気が付いた。爪を立てられなかっただけ、まだましなのか。
(今度からは、ぜったい、こんなことせぇへん……)
己の所業をこのような形で思い知らされるとは思いもよらず、痛みと苦痛から反射的に涙が浮かぶ。ちらりと目でやめてくれと訴える。しかし、ロマーノはそんなスペインの態度に少しは怯んだものの、行為自体はやめてはくれなかった。
細くて長いロマーノの指がベルトにかかる。カチャカチャと音を立てて引き抜き、ジーパンを寛げた。スペインの抵抗も虚しく、下着とともにずり下ろされ、痛みで萎えかけている性器を外へと取り出された。
「うわあ!! いややあ! ロマーノのえっち! さいてい! ロマーノも親分のこと無理やり乱暴するん?!」
自分のことは棚に上げ、足をジタバタさせて藻がき逃げようとする。暴れる度に手首に紐が食い込んで痛いのだが、そんなことには構ってられず身を捩った。しかし、ロマーノはこの期に及んでまだ観念していないスペインを一瞥すると、そっとその唇に人差し指を当てた。
「だまれ」
言葉のわりに甘ったるい声。それでぴたりと体を縫いとめられる。目を細めてスペインを射抜く琥珀色の瞳があまりに扇情的で、脊椎を何かが駆け上っていった。それで黙ったスペインをロマーノっは上目遣いで見上げ、視線を逸らさないまま取り出した性器に唇を寄せる。うかがうようなその顔に、形だけの否定を返す。
「や、もうほんま、あかんって……」
泣きそうなほど弱々しい声は、本当にロマーノを止める気があったのだろうか。もちろん、ロマーノはそんな制止など聞くはずもなく、性器に片手を添えて先端に口付けた。ごくり、と唾液を飲み込む音が生々しく響いたような気がした。こちらの浅ましさに気がついているのか、ロマーノはからかうように口の端を吊り上げて笑うと、ちろちろと尿道の入り口を舐る。添えていた手が根元を握り込み、緩やかに扱き上げていく。舌は先端だけではなく亀頭や裏筋も丁寧に舐めていった。時折、不意打ちで吸い付くようにキスをされるのが刺激になって、尋常ではなく感じた。その度にびくっと発作のように体が跳ねたが、ロマーノはそんなスペインに構うでもなく熱心に欲望を育てていく。頭の中が痺れてぼうっとする。
(こんなん、聞いてへんって)
ロマーノが何の躊躇いもなくスペインの性器にふれ、あまつさえ舐めるなんて。そんな暇すら今まで与えていなかったのだけれど、初めてのことにただ困惑し翻弄された。
「はっ、ぁ……っ、も、むり……」
踵でシーツを引き伸ばしながら、ロマーノに限界を訴える。ほんとむりやって、と重ねればようやくロマーノはその身を起こし、スペインを解放してくれた。心地良い快感が遠のき一抹のさみしさを感じる。
しかし、ロマーノは人差し指と中指を口の中に突っ込み唾液で濡らして引き抜くと、恐る恐るといった風に後ろへと腕を回した。
「ロ、マーノ……、な、なにするつもりなん」
質問をしながらも答えなどわかりきっていた。それを証明するようにスペインはロマーノのそこから視線を逸らせないでいる。瞬きもせずにギラギラと目を剥いているスペインに見せつけるようにロマーノは自身の膝を立て、双丘の窄まりを指で広げた。
「見とけ」
彼もまた余裕がないようで早口であったが、ここにきても媚びるでもなくスペインに短く命令した。スペインは魔法にでもかかったように身動きひとつとれなくなる。
まずは中指を突き立てていく。まだ爪先までしか入っていないのに、ロマーノは苦しそうに息を詰めた。無理したらあかんよ、と声をかけたが、ひどく感情のこもっていない平坦な声色になった。
「ぅ、はっ……ぁ」
見ろと言ったからには本当に見やすいよう、足を広げて指で慣らす様を見せつけてくる。ゆっくりと時間をかけて挿入し、中で折り曲げて掻き混ぜる。顔を見れば頬を真っ赤にし眉を寄せて苦悶の表情をしている。ぎゅっときつく瞑ったまぶたはまるでスペインの視線から逃れようとしているみたいだ。ロマーノ、と呼びかけただけで、彼の性器から先走りの透明な液体があふれ出た。
更にスペインの見ている前で人さし指を入り口へと当てる。既に中に挿し入れている中指とあわせて押し広げ、スペインにその中が見えるようにした。
「ロマーノ……」
「んぁっ! ぅ、あ……」
立たせている膝がガクガクと震えている。限界まで張り詰めたロマーノの性器が、真っ赤に充血していてかわいそうなぐらいだった。しかし、スペインはそんなロマーノにすら興奮し、目の前で繰り広げられている光景から視線を逸らせない。
指を二本そろえて中へと突き入れ、ほぐすように動かしているロマーノが、時折良いところに当たるのか高い声を上げて身をくねらせる。
「は、はよ……入れたいわ」
思わず口にした言葉だったが、ロマーノへと届いたらしい。泣きそうな目でちらりとスペインを見やると、口をきゅっと結んでうなずいた。
ロマーノは自らの指でその入り口を広げると、スペインの性器を宛がった。よく濡らされているためか、ふれただけでいつもより吸い付いてくるようだ。淫らに綻ぶそこに思うさま突き立てると、どれだけ気持ちが良いかをスペインはよく知っている。固く結ばれているところを、強引に分け入りながら侵入すると、襞がめくれ上がってスペインの性器へと絡みついてくる。痛いぐらいに締めつけて、スペインから離れないその熱く轟く中を、好き勝手に突き上げるとロマーノは狂ったように高い声を上げて善がる。頭の中でその想像をして神経が焼き切れそうなほどの興奮を覚えた。
ゆっくりと瞬きをひとつしている間に、ゆっくりと腰を降ろされる。そんなところ、見ている余裕もなくほとんど無理やりに突き入れているから、それなりに回数を重ねているのにロマーノのそれがスペインをどんな風に呑み込んでいるのかを知らない。初めて見たその光景は、物欲しそうに広げられた穴へと誘い込まれ轟きながらスペインを引きずり込もうとしている。どれだけロマーノが欲しがっているのかをまざまざと感じさせられているようで、呼吸をするのも忘れてただじっと見つめていた。熱くておかしくなりそうだった。
予想に反してスペインの性器は意外とすんなりと受け入れられた。最初の引っかかりさえ通りすぎれば、後はするっと入っていったので思わず驚きの声を上げてしまいそうになった。
「ンっ、あ……はぁ」
ロマーノの満足げなため息に頭の中がクラクラとした。ぜんぶはいった、と舌足らずに告げられて、このままでは始まる前から吐き出してしまいそうだと、その肢体から視線を逸らす。見たこともないぐらい気持ち良さそうにしているロマーノの姿は目に毒だった。
顔を顰めて流されないように耐えていると、不機嫌そうに、おい、と声をかけられた。
「お前、何考えてんだよ」
「な、なにって……」
お前のために頭を冷やしているとは言えなかった。スペインに言う気がなかったのもあるが、何をか言う前に入り口が締め付けられ強烈な快感に襲われて、言葉を発することができなくなったからだ。唐突のことにスペインは息を呑み、低く唸って耐える。何とかやり過ごそうとロマーノを見上げると、轟惑的な笑みを浮かべていた。
「な、ちょ……っ」
「あァ……ッ! あ ンぅ、はっ……ぁ、ああっ」
ゆっくりと腰を浮かせて入り口ギリギリまで引き抜くと、再び腰を降ろしスペインの性器を迎え入れる。敏感な少し膨らんだところに襞が擦り付けられ気持ちが良い。何よりロマーノが自らスペインの腹に跨って動いている、その事実でどうしようもなく興奮させられた。
ロマーノは気持ちが良いのか瞼を閉じてうっとりとしている。一定の調子を保って繰り返される律動は、スペインには少し物足りなくてもどかしいぐらいだったが、自分のリズムで良いところに当てているのだろう。喘ぎ声を上げる度に中が轟いてスペインへと纏わりついてくる。
ロマーノの中が熱くてどうにかなってしまいそうだ。引き抜かれる度にきゅうっと締めつけられる。
「はっ、も……とけそ」
「ンっ……あぁ、ふっ……ぅ、きもちい いか?」
不敵に笑って嬌声の合間に首をかしげて聞いてくる。それで頭が真っ白になった。
快楽を求めて動く薄い腰に足を巻き付け、内腿に力を入れて膝で固定した。ロマーノは腰を振るのをやめようとはしなかったが、思うように動けなくなったことに不満の声を漏らした。目元を真っ赤に染めて恨みがましい視線を寄越す。生理的に浮かんだ涙の膜が張った琥珀色の瞳。下から見上げると涙の粒が長いまつ毛に纏っていて、瞬きをする度にパタパタと音がするようだ。
神経が焼き切れるかと思った。
ロマーノの腰に回した足はそのまま、腹筋を使って彼の中を掻き混ぜた。
「ぅあ……ッ!」
それまでとは異なる鋭い突き上げに、少しは余裕のあったロマーノから悲鳴のような嬌声が上がった。互いに動きが制限されているために、狙いが外れて彼の良いところとは別の場所に当たってしまう。その予想できない動きのせいか、ロマーノの反応はいつもより大げさなものになっていった。切羽詰まったあえぎ声の間に待ってと懇願が入る。
「ロマーノが、誘ったんやろ……っ」
力任せにガツガツと動かしていたから、手を拘束しているベッドヘッドが悲鳴を上げてギシギシと軋んだ。ひとりではしていたが、こうして体を合わせるのは久しぶりだ。スペインも普段以上に煽られていて、すぐにでも精液を吐き出してしまいそうだった。熱いロマーノの熱がスペインへと絡みついて離れない。引き抜こうとする度に名残惜しいと締めつけて、割り入れる度に歓喜したように轟いて誘い込む。そのいやらしくも男に媚びるような内部に、いつもの苛立ちを感じて強く腰を突き上げた。
「あっ、あァ……! も、もたないからっ、あンっ! あっ、はっ!」
中がきつくスペインを搾り取るように収縮して締め上げてくる。一瞬、声が止まったかと思うとロマーノの性器から勢い良く精液が吐き出されていた。それを見届けてスペインも、迫りくる快楽に逆らわずに血が上りつめていくのに従って射精する。
「はっ……ぁ、はあ、はあ……」
腰を離してやるとロマーノがだらりと胸へ倒れこんできた。その勢いでずるりと中のものが抜けた。それに対して、あ、と追いかけるような声を上げながら全身をビクビクと痙攣させて絶頂の衝撃に耐えている。
「ロマーノ、手、外して」
荒い呼吸の合間に発した短い言葉は命令のような響きを伴って室内に響いた。ロマーノはそれに、ちらりと視線を上げてためらっている。
「離して、ね、今のじゃまだ足りへん」
ほとんど瞬きを忘れていたせいで、すっかり乾ききった眼で見やる。ロマーノが息を呑んだのがわかった。
紐が解かれ自由になっても、ずっと固定されていた手首にはわずかに違和感が残っていたが、それに構うことなくロマーノの肩を掴んで唇に噛み付く。ガツ、と歯が彼の柔らかな唇に当たった。その衝撃で切れたのだろう。思いのまま貪ると鉄の味がした。
掴んでいた肩を引いてうつ伏せにシーツへと押し付け、腰を突き出させた。先ほどスペインが放った白濁の液がどろりと太腿を伝っていく。いまだ閉じきらずにスペインが入れていた形のまま開いているその孔へと遠慮なく滑りこませた。
「はっあ、やっだ、スペイン……ッ、あぁ!」
ガリガリとシーツを引っかいて快楽をやり過ごそうとしている。落ち着かせる暇も与えずにつかんでいた腰を揺さぶって中をかき混ぜた。きゅうきゅうと締めつけてくるので気持ち良いのだろう。ロマーノの鼻から抜けるような甘い声に誘われて、同じように揺すって快楽を引きずり出す。
音が立つほどゆっくりとギリギリまで引き抜き、入口付近まできたら今度は乱暴に突っ込んだ。何度も繰り返していると感覚が研ぎ澄まされたように、神経が鋭敏になって、その襞の皺まで伝えてくる。
ロマーノからはひっきりなしに高く艶めいた嬌声が上がった。それに煽られるまま、だんだんと突き上げる速さが増していって、スペインは自らの快楽を追い求めて反応の良いところを重点的に狙い定めていった。
「あァ……、や あっ、んぅ、あっ! ひぅ、ぁ…はッ、んぅ……!」
されるがまま押さえつけられ揺さぶられているロマーノの体が大きく弛緩した。思いがけないタイミングで中が締めつけられ背筋を這い上がってくる感覚に追い立てられる。思わず抑えていた肩に力をかけてしまい、ロマーノから痛いと抗議の声が上がったが、力のゆるめ方もわからず腰をつかんで揺さぶり続けた。
痛いと言いながらロマーノの中は一段と締めつけが強くなった。そこへ乱暴に突き立てるからスペインの先端が押しつぶされるような形になる。更なる快楽を求めようと体を倒して深く繋がりギチギチと奥をいっぱいに満たす。
「はっ、も……い く、あぁ! いっく……んぅ!」
そのまま攻め続けていると、ロマーノが限界を訴えた。止める間もなく言葉の通り足先までぴんと伸ばし、シーツへと精液を吐き出す。
不定期にひくつく中の肉がスペインの射精を促す。その熱に気を抜くと達してしまいそうだったが、掴んでいた肩に爪を立てて耐えた。きつく握り込んだせいで爪痕がくっきりと残ったが、ロマーノはそれにすら感じるのか、意味のなさない声を上げて入り口を締め付けてくる。喉の奥で声を噛み殺し首筋に歯を立てて、強烈な射精感をやり過ごす。頭の裏側が燃えさかるようだ。未だ体を強張らせ射精の余韻から抜け出せていないロマーノの姿に、はあ、と深く息を吐いて、円を描くように中を掻き混ぜた。こちらはまだだ、とその熱の存在感を示すようにゆっくりと動かせば、焦ったようなロマーノが首を横に振った。
「あァ、あ、ん……あっ、も、や! やだっぁ」
涙まじりにロマーノがやめて、と懇願をする。達した直後でそんな気になれないのだろう。しかし、容赦なく硬くなった前立腺を押し潰すように腰を動かしてしつこく攻め立てれば、次第に声が艶づいて勝手に腰が揺らめきスペインを誘うようになる。確実に良いところばかりを苛まれたロマーノはいよいよ泣きじゃくり、許してゆるして、と助けを求めているのかシーツに指を滑らせる。
自分以外の何かに手を伸ばそうとするロマーノに苛立ってその腕を掴み引き起こす。
「もっ、ぁぅ、や、やだ! ぁあっ! いやっ、あ……んぅ」
後ろから抱え上げるように膝の上に座らせると、挿入する角度が変わってロマーノの体重の分、先ほどより深くなった。動けないように後ろから羽交い締めにして小刻みに腰を揺らせば、ひどい、と非難めいた言葉を発する。これならば、そうそう狙いがずれることがないなあ、などと今さらな発見に感動し、規則的にロマーノの体を揺らしながら、その横顔を覗き込むと可哀想なぐらい目を見開いて、パタパタと涙を零した。背を弓なりに反らせて手の甲で口を抑えるので、胸が突き出される形になった。すかさず、晒された胸先をつまみ上げてコリコリと弄ぶ。
「あっ、も……ぁ、いっく……ぅあ!」
強い収縮を繰り返し再びロマーノが射精をする。立て続けに達したせいで、ロマーノは力尽きたのかぐったりとスペインへとその身を預けてきた。自ら姿勢を保っていられないほど力の抜けたロマーノの姿に満足感を覚えて、ようやくその丸い後頭部に優しくキスをした。
はあはあ、と荒い呼吸を整えようと肩で息をつくロマーノに、なあ、と声をかける。
「俺、まだやから」
「んっ、も、……むりだって」
「いけるって。久しぶりやし、ほら」
膝の下に腕を差し込んで抱え込み足を大きく開かせる。ずるり、と自身の性器をロマーノの中から引き抜き、抱え上げていた体を落として突き入れる。気だるそうなため息が聞こえてきたが、彼の奥深くへと狙いを定めて何度も抜き出したり挿し入れたりを繰り返していると、ロマーノのほうから腰を浮かせてスペインのやりやすいように揺らし始めた。
「えっろ……」
その声にすら反応して中を轟かせるので、スペインがどれだけ興奮していてロマーノに欲情しているかを知らしめてやろうと、その耳元に口を寄せて呼吸を聞かせる。ロマーノが締めつける度に低くあえいで伝えると、それに感じたロマーノが身をよじらせた。やめろ、と言うくせに逃げようともしないので、気を良くして耳たぶへと息を吹きかける。そのまま軟骨を唇で挟んで舌で舐ぶれば、わかりやすすぎるぐらいはっきりとスペインを締めつけた。
ロマーノもまた貪欲に快感を求めているのだろう。揺らめいていた腰の動きは大胆なものになっている。
「はっ、ん……あぁ! あぁ、あ、スペイン…スペイン!」
しまいには自ら胸へと指を伸ばして弄りだした。衝動に任せてそのうなじに噛みついたが、ロマーノは痛がるどころか、むしろ気持ち良さそうに目をつむって感じ入っているようだ。
「もっ、やっだ ぁ、あッ……っ! も、むり んぅ……!」
息をつめて体をのけ反らせたロマーノがピクピクと痙攣しだした。それに合わせて中が収縮し、強烈な快楽を生んだ。スペインは後ろから抱きかかえていたロマーノを羽交い締めにし、身動きのとれないようしっかり抱えこむと、最奥まで自身を侵入させた。
「も、……ロマ、いく……ぅんっ」
奥の壁へと精液を叩きつけながらロマーノの性器に手をかけて擦り上げる。ロマーノは言葉もなく全身を弛緩させていたが、パタパタ、と涙が零れるように、わずかに液体を吐き出した。
搾り取ろうとする勢いでひくつく中に低く唸り声を漏らす。全てを出し切ろうと力の抜けきったロマーノを揺さぶった。いつの間にか乾いていた唇を舌で舐めて濡らした。意味のない音の合間にスペインの名を呼ぶ声が聞こえる。それで頭の中は真っ白に焼き切れた。
「はっ、あ……は、はあ、はあ」
一瞬、意識が遠のきかけたが、ふっと我に返ってロマーノを見やる。続けざまに無理をさせた。
「ロマー、ノ」
呼びかけると、だらりとスペインに身を任せたロマーノが、涙に濡れて濁った瞳で微笑んだ。状況にそぐわないその表情に、ごくり、と喉を鳴らす。
「スペイン」
「ロマーノ……?」
身をすり寄せながら、再び繋がりを揺すって上目遣いで見上げてくる。明らかな欲をねだるその表情にロマーノの中で己の欲望が膨れ上がるのがわかった。
「なあ、もういっかい」
掠れた声。ええんか、と聞けば弱々しくうなづく。
「やめてって言っても知らんで」
ロマーノの焦点の合っていない瞳を見つめて腹の底から湧き上がる暗い愉悦に身を浸らせた。