もえあがるみどりの

R-18習作。

 セックスの最中、スペインにきつく抱きしめられるのが好きだ。肩口へと額を押し付けてくる仕草や漏れ聞こえるくぐもった声からスペインがいかに興奮しているのかを思い知らされるし、ぴったりと引っ付いたからだから伝わる熱に安心する。そういう時はスペインの限界が近いことがほとんどなので、ああそろそろなんだな、と朦朧とする意識の中で感じられるのも悪くはなかった。
 とは言え、その態勢ではロマーノの快楽はあまりない。何せ締め上げられるぐらいの強さで抱かれるので痛くて苦しくてそれどころではないのだ。動きにくいこともあって、どうしても他と比べれば気持ちよさは落ちる。性感を追い求めるだけであれば、ロマーノが上に乗るか後ろからされるほうがずっと気持ち良くはなれた。
 ただ、スペインとのセックスは好きだからするスキンシップの延長であって快感を得ることが目的ではない。少なくともロマーノはそうだった。だから、痛くても苦しくても抱きしめられるのが好きなのだ。
 ロマーノから見るとほとんど不感症と変わらないスペインが前戯の時に快楽を感じている様子はない。何か仕掛けてみても無反応か、せいぜいくすぐったがる程度だ。それは挿入して動き始めてもあまり変わりはなく、何が楽しいのか快楽に喘ぐロマーノをじっと見つめている。そんなスペインが余裕を失くし、力任せに抱かれるその瞬間、何とも言えない優越感のような妙な感覚に陥った。あのスペインがロマーノに興奮を覚え、ロマーノのなかで感じ、夢中になっている。その事実にどうしようもない激情が込み上げてくるのだ。
 しかし、スペインは毎回律儀にロマーノの快楽を優先してくれるので(そう、何度ももう充分だと音を上げてもスペイン自身の気が済むまで執拗に快楽を与えてくれるので)、彼が先に達することはあまりない。と言うよりも、そういう行為をするようになってから一度もなかった。いつもロマーノが何度か精を吐き出したあと、すっかり疲れきった頃に抱き寄せられる。シーツに仰向けに寝かされ真正面で向き合う姿勢になって、ぼんやりとまぶたを開くとこめかみと額にキスを落とされる。そこに至るまでの前戯やら体位やらはよくそんなに思いつくものだと感心するほど様々なのに、最後だけはそうと決まっていたので、ロマーノはすっかり抱きしめられることが終わりの合図のように刷り込まれていた。

「ふっ は……ッ!」

 激しさが増していく律動で隙間ができる度にロマーノを抱え直し、搔き抱く腕の力は一層強くなる。背中と首の後ろに回された手のひらには容赦のない力がかかり、掴まれたところが軋むようだった。その痛いぐらいの強さに眉を顰めて唸ると、まるで逃がさないとでも言うかのように身動きもできぬほどがんじがらめに拘束される。肺を押しつぶされるようなその力にひと呼吸分、息が止まった。瞬間、目の前が真っ白になり、なかをいっぱいに押し広げて収められているスペインのそれが内壁越しにわかるぐらいはっきりと脈打つ。同時に抑える気もないのか喉の奥でぐるぐると鳴らされたような唸り声が上がった。まるで獣のようだ。引っ付けられた肌が他よりも熱い。じんわりと汗ばんでよく滑る。
 一度ずるりと引き出された性器が力任せに突き入れられガツガツと内側を抉っていく。その衝撃に背筋をピリピリと刺激する慣れた痺れのような感覚を覚えたが、同時にもう長くはないことを悟って目を瞑りやり過ごそうとする。背中に回された腕が肩甲骨のあたりで交差し背後から肩を強く掴まれた。いつの間にかふれられていた分厚い唇に強く押し付けられる。口で呼吸できなくなった分、ふっ、と鼻から漏れる呼吸が大きくなった。なりふり構わないその姿にロマーノの思考も徐々に焼き切れていく。肩や首筋を撫でていく熱い吐息が襟足を撫でていった。

「はっ……あ、ァ ん」

 途切れる喘ぎ声はもうどちらのものかわからない。ぼんやりとした意識が浮遊して途切れそうになったその瞬間。

「ひっ……いぁ !」

 不意に肩口に噛み付かれた。歯形が残りそうなほどの強さに、思わずからだが強ばり大きく跳ねる。その衝撃で散漫になっていた意識が戻ってきたが、そのせいで意図せず締め付けていたのだろう。スペインが堪えきれないと言うような低い唸り声を上げる。

「ロマー、ノ」

 目が合った瞬間、バチッと音がした。チカチカと視界がブレる。ロマーノは呼吸すら儘ならなくて口をパクパクと開いて酸素を求めたが、スペインの責めが緩められることはなかった。

「あ、ふぁ……ッ、ぁああ! や、だ……、あ、やっだ あぁっ」

 頭を振って耐えようとするが、敏感になった内壁は突かれる度に快楽を拾い上げてくる。じわじわと染み出したように緩やかに精液が吐き出されていく。つま先から頭のてっぺんまで全身を痺れと倦怠感が襲いからだに力が入らなくなった。
 くったりと横たわって身を震わせていると、視界に影が落ちる。閉じそうになるまぶたを無理やりこじ開けると境界線のぼやけた光がいくつも浮かんでいる中で、ひとつだけ鮮やかなみどり色がもえあがっていた。それは温度の高いほのおのように鮮やかで暗い色をしている。

「あ、も むり……やだ、あァああ、んッ! は、あ……あっ!」

 まだロマーノが出し切らぬ内から再び強く抱き込まれスペインが出たらめに注挿を繰り返した。鋭く尖った神経には痛いぐらいだったが、数度、突き入れるだけで今度こそスペインもロマーノのなかへと精液を吐き出す。きつく抱き締められ、体内の一番奥に出されたそれは熱い。まるで咀嚼するかのように腰を揺らめかせながら、ぶるりと身を震わせたロマーノを離さないその強さ。それが好きだった。

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