大迷惑な二人

痴話喧嘩。下ネタ注意

「ケッパレ、スペインの鈍感遅漏やろうめ! 何かっつーと手ぇ出してきやがって、お前が俺のこと弄りさがすからあちこち擦れて痛いじゃねぇか! どうしてくれんだアホやろう!!」
「な、親分、遅漏ちゃうもんロマが早すぎるだけやんか!」
「どう考えてもてめぇが遅すぎんだろうが!!」
「それにお前全然ヤらせてくれへんやん、さわるぐらい好きにさせてくれてもええんちゃう?!」
「は、はあ? 全然って何だよ! てめぇ俺がダメだっつっても聞かずに好き勝手、毎日毎晩ヤってんじゃねぇか!」
「俺の気が済むまでできたことないもん! お前すぐへばるしめっちゃ欲求不満なんやけど!」
「はっ、お前の気が済むまでって何回ヤる気だよ、発情期の犬猫じゃあるまいし」
「はつじょ……!」
「大体、毎回前戯が長すぎんだよ! 言葉責めもねちっこいし、そんなことしてるヒマあったらさっさと突っ込みやがれ」
「それこそ犬猫と同じやん、すぐ入れてすぐ出すって動物的すぎへんか」
「ああ?!」
「言っとくけど、俺、お前のワガママめっちゃ聞いてるんやで! いっつも朝は叩き起こされてご飯作ったってるし、イタちゃんとドイツが仲良くしてるのがムカつくってだけでイタリアまで急に呼び出されても会いに行ってるし、フランスやプロイセンと遊んでてもロマーノのこと優先してるやん!」
「う……」
「それだけちゃうで、内職で忙しい時でも構えって言ってくるのに付き合ってるし、あれもこれもそれも、ぜーんぶ聞いたってるやんか!」
「……」
「やからエッチぐらい好きにヤらせろや!」
「意味わっかんねぇよ! それとこれとは話が別だろ?! お前は俺とヤるためだけに付き合ってんのかよ!」
「そんな人をヤりたいだけみたいに言わんといて!」
「今日の朝から今の今までずーーーっと、やろうのない胸弄り倒してただろ、ストロンツォ! おかげで赤く腫れちまったじゃねぇか!」
「しゃあないやん、そこにロマーノがいたら手ぇ出してまうんやもん!」
「やっぱりヤりたいだけなんじゃねぇか!」
「言うても、この三時間ぐらいのことやろ! イチャイチャしとっただけやん、ノーカン!」
「朝起きてからまだ三時間しか経ってねぇんだよ! 普通に引っ付いたり手ぇ繋げばいいだろ!」
「それと同時に乳首を弄りたいんです」
「…………弄るだけでいいのか?」
「え、ヤらせてくれんの?!」
「何がノーカンだーやっぱヤろうとしてんじゃねぇかよ!」
「ちゃうやん、ロマーノから誘ってるんやったら俺に断る理由はないし」
「うっせー昨日も散々ヤっただろ! もう出ねぇよ、ちくしょう!」
「俺、二回しかイってへんもん!」
「だからとっとと入れろっつったんだよ! ネチネチ前戯で粘るから俺が何度もイくはめになったんだろうが!」
「早漏やから」
「ちっげーし、ちくしょう! もういいイタリアに帰る!」
「な、ちょ、ロマーノ」
「ついてくんな、はげ!」
「……! なんやねん、もう好きにしぃ! ロマーノのことなんかもう知らん!」
「言われる間でもなく好きにするぜ! ベッラとお近付きになってデートしてやる!」
「はいはい、フられて泣き付いてきても知らんからな!」

 フランスがスペインの家に呼び出されて屋敷に訪れたのは、夜も更けて日付が変わりそうな時間だった。普段は陽気で落ち込むことなんてないんじゃないかと言うぐらい底なしに明るい友人(であると同時に過去に様々な因縁のあった腐れ縁でもある)から、世界が滅亡する前の日のような絶望を集めた連絡が着た時、心底、関わり合いになりたくないと思ったのだが、五分置きに無言電話がかかってきたので無視し続けるわけにもいかず、こうして隣国まで来てやったのだ。たかが、恋人とケンカしたぐらいでそんなに落ち込むのならば何が何でも手放さなければ良いと第三者の立場であれば思うのだが、フランスだって全くの泣き言を言わないわけでもないので、あまり大きなことは言わないほうが良いだろう。
 手土産をワインにするかどうするか悩んで、酔って手が付けられなくなっても困るのでブドウジュースにしておいた。屋敷の呼び鈴を押して二分後にフランスを出迎えた男の憔悴しきった顔を見た時、その選択が正しかったことを悟る。酒にしなくて良かった。これは面倒ごとに巻き込まれるところだった。

「で? またケンカしたの?」

 先ほどからグスグスと泣き続けて言葉を発することのできないスペインに代わり、これまでの経験と現在の状況から導き出した推理を述べる。
「今度はなに? お前が鈍感すぎてあの子の目の前でイタリアと仲良くしすぎた? それともロマーノがお前の目の前でナンパして下らないヤキモチで八つ当たり?」
 この二人ならばありそうで、と言うか実際に今までにあったことである。聞けばスペインがふるふると首を横に振る。

「ロマーノのデレをスルーして怒らせた、そばにいるのに内職に没頭して構わなかった、ロマーノが映画の俳優のことをべた褒めしてた、自分の知らないところで男友達ができてた。……うーん、あとは」

 話を聞いてほしくて呼び出しているはずなのに、口を頑なに閉ざしてボロボロ泣いているこの男は実に面倒くさい。それに律儀に付き合ってやるのはフランスの優しさであるが、同時にここで放っておくといろいろ拗れて収拾がつかなくなるのもあった。後あとの処理のほうがやっかいなのだ。この二人の場合。

「ロマーノが嫌がってるのに無理やりセックスしたとか」

 スペインの動きがピタリと止まる。肯定はなかったが否定もない。と言うことは当たらずとも遠からずなのだろう。当たりを付けて、はあ、とため息を吐き出した。

「何をしたのか知らないけどさっさと謝っておけよ」

 ロマーノだって夢見る乙女じゃあるまいし、本気で怒ってはいないだろう。大方、恥ずかしいか何かで意地を張っている内に言い合いになって引っ込みがつかなくなったってところのはずだ。呆れながらも携帯電話を取り出して電話帳を開いた。

「ちゃうもん」
「何が」
「……ちゃうもん」

 うー、と唸りながらスペインがゴロゴロと床を転がりだした。他の誰かがすれば奇怪な行動だと驚いたのだろうが、あいにくこの男がすれば、いつものことだと適当に見逃せる。

「だから、なにが」

 視線を携帯電話の液晶画面に落としたままで相槌を打つ。真剣に聞くだけ馬鹿馬鹿しい。

「ヤりたいだけちゃうもん。ロマーノのことが好きやから、もっとくっついたりイチャイチャしたいって思うんやんか。ほんまは仕事でなかなか会えないこともあるし、こっちにいる間はずっとヤってたいけど、ロマーノがそれじゃもたへんのもわかってるし我慢もしとる。俺ばっか好き勝手してるみたいに言われても、こんな、頑張ってるのに」

 言いながら語調が強くなってくる。それを言う相手は俺じゃないでしょ、と思ったが口にはしなかった。この二人のことだ、きっと言っても上手く伝わらなかっただろう。

「それって結局、ヤりたかったってことでしょ?」
「……俺だって一緒にご飯食べたり映画見たり買い物行ったり、いろいろしたいって思ってるよ! サッカーとか見たいからチケットだって取ってたもん! でもやっぱりそばにおると体が勝手に動いてまうねん、しゃあないやんか、もう本能やねんって!」
「ああ、それだけロマーノのことが好きだと」
「……やって俺、ロマーノ以外に勃たへんのに一緒におったらそりゃ手ぇ出してまうって!」

 開き直って立ち上がったスペインの目の前に携帯電話を掲げて見せる。目を丸くした男の視界に画面の中の文字は見えているだろうか。

「え、え……?!」
「ロマーノ聞いてるー? そういうわけだからさっさと仲直りしなさいね。お兄さん、今日はもう帰るから」
「はっ?! え?」
「イタリアから着信あってずっと繋がってた、声筒抜け、OK?」

 いまだ状況を把握できてないだろうスペインにそう告げると、馬に蹴られてしまう前に退散することにする。車で来て正解だったなあ、今日の俺ナイス判断だと胸の中でこっそり自画自賛しながら、赤くなったり青くなったりを繰り返しているスペインを放って屋敷を出たのだった。

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