リーマンパラレル

続きから英日中心、ちょっと西ロマのリーマンパラレル妄想。

英日と西ロマが同じ会社で働いています。西・ロマ・英が営業部で日が総務部。社歴は日が一番上で、西が3年目、ロマ・英は新入社員。
なぜか多国籍だけど特に理由はないような、ふわっとした世界観です。

契約を取ってくることにかけてはトップクラス、営業部期待の星・スペイン先輩は新入社員ロマーノとイギリスの新人教育を任せられることになりました。しかし今年の新人のふたり、ロマーノはツンツンしているわりにすぐに怯えて逃げ出しちゃうし、イギリスはツンツンしている上に人のことを小馬鹿にしたような言動が多く、どうにも扱いにくいのです。しかもスペイン先輩、契約を取ってくることは得意ですが、事務作業がとってもニガテ!実はこの新人教育も、後輩の面倒を見ることでスペインの意識が芽生えて事務作業も大切にしてくれないかな〜という上の思惑もあったのです。

ところが、そこは感覚的なスペイン先輩。そんな思惑は無視してフリーダム新人教育をはじめます。

「まあそんな感じで電話してアポ取って、ちゃっちゃか喋ったらええねん! はんこさえ押してもらったら後は何とかなるで!」
「絶対嘘だろ!」
「もーイギリス、さっきから何なん?」
「こっちのセリフだ、ばかぁ! お前の説明が適当すぎて全然わかんねぇんだよ!」
「え、そうなん? ロマーノもわからんかった?」
「いやもう大体わかった」
「ロマーノはかしこいなぁ〜!」
「うるせぇ!」

ロマーノはさっさと解放されたいだけなんです。

ラチが明かないと悟ったイギリスは独学で営業を学ぶことにしました。あのイギリスが新人時代に泥くさく、自ら新規エリアを開拓して足で稼ぐ営業をしていたら萌えませんか?
一応、週に一回スペイン先輩に状況報告してロールプレイングも見てもらいます。ロールプレイングに関してはさすがにトップ成績を叩き出しているだけあって的確なスペイン先輩。しかしイギリスは素直に認めることができません。

「あー……イギリスは話し方が上手いんやけど、その説明は後に持ってきたほうが」
「俺はこっちのほうが良いと思いました」
「でもずっと大っきな話題が続いたら聞いているほうも疲れてくるで」
「けど先に概要を言わなきゃ伝わらないでしょう」
「やから、そこは比喩を挟んで……」
「俺はこのままでいく」
「……強情なやっちゃなあ。お前がそれでええなら好きにし」

ちょっとピリっとしますね。
それをびくぶる見ないふりしつつ、一触即発な雰囲気が気になって仕方がないロマーノ。ここに弟がいたら後ろに隠れて「よくわかんねーけどケンカすんな、このやろー」と言っています。

イギリスは産業革命で天才イタちゃんのアドバイスに心折れつつも、日本美術やインド美術を学んで工業デザインを切り開いたぐらいなので、最初は上手くいかないこともいろいろと試行錯誤をして、自分なりの営業スタイルを身につけるようになっていきます。

さて契約が取れるようになれば事務仕事も必要になってきます。スペイン先輩には絶対教えてもらえない(なぜなら自分がわかってないから)、見積書の作成や契約書の取り寄せ、請求書の発行、経費精算…etc。調べようにも会社によってやり方が違うこともあります。ならばわからないことは提出先に直接聞くしかない。イギリスは総務部に飛び込みます。

「おやイギリスさん。最近よくこっちに顔を出していますね」
「あ、いや……俺の教育係が、その」
「あー……スペインさんでしたっけ? 確かに彼には教わることはできませんねぇ」

苦笑する日本さん。その表情になぜかイギリスまで気まずい気持ちになりつつ、申し訳ないけど教えてくれ、と切り出します。イギリスって日本さんには態度違いますよね。素直。

書類の作り方や提出の仕方を教わっているうちに、イギリスは日本さんと打ち解けるようになっていきました。この間、半年あまり。半期決算も経験しました。あまりのてんやわんやで予算達成できないのではないかとキリキリしていたイギリスに、日本さんがお茶を差し入れするイベントがあっても良いですね。

「くっそー……なんであいつはもう予算達成してんだよ……しかもロマーノのこの数字、半分以上はスペインから流してもらっているやつじゃねぇのかよ」

できる営業マンって自分の予算が達成できるのを見越した上で、おいしい案件を後輩に回してあげたりするらしいですね。スペインかっこいいですね。
イギリスに回さないのはあからさまなエコ贔屓……ではなく、そんなことをされたらイギリスのプライドが傷つくだろうという配慮です。空気は読めませんが、そういう男の気づかいはできたら良いなあ(自分自身がそういう男的かっこつけなところあるから)。

「……イギリスさん、イギリスさん」
「あ、……あれ?」
「おはようございます。と言っても夜ですが」

見込み客のリストと今月の売り上げをにらめっこしながら、いつの間にかデスクで居眠りしていたようです。日本さんが優しく揺り起こしてくれました。

「わり……いつのまにか寝ていたみたいだ」
「そんなに時間は経ってないと思いますよ。三十分前に通りがかかった時は起きていらっしゃるようでしたので」
「そうなのか」

そっと差し出されるティーカップ。

「え、」
「眠気覚ましになるかわかりませんが、紅茶です。イギリスさんほど上手には淹れられませんがどうぞ」
「……これを俺に? 良いのか?」
「ええ、どうぞ。ついでにお菓子も持ってきました。ラ・ボヌフォアのマカロンです」

ラ・ボヌフォアのパティシエが気に入らないイギリスさんは複雑な気持ちで受け取ります。

「いつも遅くまで残っていますよね」
「ああ……まだ予算達成できてねぇからな」
「最初は皆さん、そういうものですよ」
「……スペインもか?」
「あ、あー……彼は例外ですけど」
「そうか……」

別にスペイン先輩のことをライバル視をしているわけじゃないけど、何だか腑に落ちないイギリス。感覚的にサラーっとこなせちゃう人に対して凡人は何とも言い難い感情を抱いてしまうものですね。

「でもイギリスさんって粗利が高いですよね。おかげでうちの部長もご機嫌です」
「そ、そりゃあな! 数字だけ上げてりゃ良いってもんじゃねぇしな!」

褒められてくすぐったいイギリス、あからさまないつもの反応を返してしまいます。それを見て目を細める日本さん。穏やかな空間。終電間際のオフィスで二人きり。まだ恋とも呼べないような淡い感情。しかし確実に二人の間に何かが芽生えるのです。
ちなみにスペインは粗利の計算なんてしないので、このあたりの波が激しいです。契約めっちゃ取ってくるし売上達成の意味ではすごいけど、たまにとんでもない売り方をしていたり、何だり……。

一方この頃スペインとロマーノはといえば、イギリスが自分で動くようになってからというものほぼマンツーマン。とっくに愛を確かめ合っていて、隙あらば社内の会議室とかでもヤってそうです。ラテンこわい。
あ、でもイギリスさんもジャンプラ69話で「あっ今なんか出そうだ」って言ってましたしね。3コマ目のあの表情は恋に落ちる少年の顔でしたが、その次の瞬間にはもう発射j……。

下ネタは禁止です。続けます。

そんなこんなで少しずつ距離を詰めていく営業部新人イギリスと総務部日本さん。年末のてんやわんやも1月2月の閑散期も年度末決算も、どうにかこうにか乗り切って新しい季節を迎えます。
個人的希望としては年末の忘年会で少し距離を縮めるも、新年会では逆に挨拶回りに忙しくてほとんど話ができず、一歩近づいては離れてしまうような微妙な距離感を保っていたら良いなと思います。その間に煮え切らないイギリスがもだもだしてたら良いな。

4月、新入社員が入ってきました。イギリスも一年前の自分のことを思い出しながら、新鮮な気持ちになりました。ちなみに西ロマはこの一年の間に同棲するようになっています。
社内恋愛を咎めるような社風ではないので怒られはしませんが、どうにもスペイン先輩が後輩の育成に向いていないということは営業部内共通の認識として確立しました。幸いなことにイギリスは一人でも十分にやっていけるほどに成長し、ともすれば売上成績もスペイン先輩に手が届きそうなところまで伸ばしています。ロマーノはやしなわれなれしすぎてて少し頼りないところもありましたが、不器用ながらに(そしてスペインの助けを借りつつ)どうにかこうにかやっていけている、ぐらいにはなっていました。

歓送迎会の季節です。新年会では日本さんとほとんど話ができなかったから、つい視線で追いかけてしまうイギリス。宴も中盤に差し掛かった頃、日本さんが店の外に出ていくのが見えました。思わず後を追うイギリス。

「おや、イギリスさん」
「何してんだ?」
「桜が綺麗でしたので、つい」
「さくら?」

店の向かいにある公園の一角に桜が植わっていたのでした。一本だけでしたが、見事な満開。夜空を背景に、街灯に照らされた桜の花びらは幻想的ですらありました。

「すげ……」
「店の中から見えたんです。一本しかないようですが、会社からも近いことですし花見に来ても良いですね」
「ああ、そうだ、な」

ちらりと見た日本さんの横顔に思わず見とれてしまいました。桜に目を細める日本さんの表情は穏やかでありつつも、どこか切なげに見えて、言いようのない感情が胸にこみ上げてきます。

「きれいだ……」
「ええ、本当に」

イギリスが恋に落ちた瞬間でした。

PAGE TOP

close