俺トマお疲れ様でした

昨夜、家に帰宅しましたが、結構疲れていたのかぐっすり眠れました。イベント中はペース配分考えず、かなりのハイテンションになっているので自分が何を口走ってしまったのか朧げな部分もありますが、とても楽しかったです。

俺トマはたくさん人がいらしていて、そのためかペーパーラリー特典のクリアファイルは早々になくなっていたそうで、私が行けるタイミングでは残っていませんでしたが、それだけ西ロマが盛り上がっていて大盛況だったということですね。私も戦利品をたくさん買えたし、いろいろな方とお話してもらえて充実したイベントでした。サイトを見ていると言ってくださった方もいて嬉しかったです。当日、お話してくださった方、本を手に取ってくださった方ありがとうございました。

次回以降のイベント予定は夏インテ、10月せかちゅ、1月インテとなります。今年も10月せかちゅでイベント納めになりそうです。インテでは今回出したコピー本をオフにまとめる予定です。あともう一冊出したい欲求もありつつ、せっかくだから3P話もう一本足したい気持ちもありつつ…腐女子心は複雑です。

さて、続きからツイッターでぼそぼそ呟いていたロマーノ王子様&お供のスペインパラレルのまとめです。元ネタはアラビアンズ・ロストというゲームですが、友達から聞いたあらすじを元に好き勝手改変したので、あまり要素が残っていないかもしれません。

イタリア・パスタ王国国王ローマの孫で第一王子のロマーノは弟のヴェネチアーノと共にとっても過保護に育てられ、ちょっと世間知らずながらものんびりマイページな青年に成長しました。ロマーノのモットーは「今日なんとかなれば、まぁなんとかなるぞ」、臆病でへたれなくせにざっくりした性格で、祖父や家臣たちを心配がらせています。
そんなロマーノも17歳になり、結婚話が持ち上がるようになりました。イタリア・パスタ王国は大国のため、あちこちの国から見合いが持ち込まれるのですが、当のロマーノは呑気なもので「結婚するならベッラが良い」と見た目で絵姿を選ぶありさまです。こんな様子で悪い虫にひっかかるんじゃないだろうか……心配した国王ローマはロマーノに課題を出すことにしました。

「爺ちゃん、ロマーノの結婚のことを考えたんだけどな。一年間で金貨1000枚を貯めれたらロマーノが選んだ人と、貯められなかったら爺ちゃんが選んだ人と結婚するってーのはどうだ?」
「1000枚も?! で、でも爺ちゃん。俺、自分で金を稼いだことなんてないし……」
「そう、だからこそだ。お金を稼ぐ厳しさを知り、自分でやりくすることを通して人を見る目も養えるだろ。それにロマーノならできるはずだ」
「…じ、爺ちゃん…っ!」

祖父に認められて喜んだのもつかの間。ローマはさらに条件を出しました。

「それにロマーノには、えーと、スペイン!」
「はいっ! ここに」
「このスペインを補佐役につけよう」
「な……んで、スペイン……?」
「こいつの家は元々、貿易で成功した家系だし、ロマーノも知っての通り一年前まで身一つで旅に出ていたからな。金を稼ぐ方法もよく知っているはずだ。それに子どもの頃はよく一緒に遊んでいたじゃねぇか。お互い気心も知れているだろ?」
「……」
「さあスペイン、今聞いた通りお前にはロマーノについて行ってもらおう。それが城勤め見習いの最終試験ってことにする。頼んだぞ」
「……御意」

こうしてロマーノは課題をクリアできなかった時には黙ってローマの決めた婚約者と結婚する約束で金貨を稼ぐ旅に出ることになりました。

さてロマーノの補佐役につけられたスペインはロマーノの乳兄弟です。ロマーノと歳は変わりませんが子どもの頃から城に仕え……という名目でロマーノの面倒を見てくれた幼なじみでもあります。子どもの頃はよく一緒に遊び、イタズラをして大人たちに叱られたり、城を冒険したりした仲でした。
しかし彼は12歳の成人の儀の際に国に忠誠を誓い、王の力になれる人物になるための修行と称して旅に出ていました。旅の間は単身諸国を見て回り、家族にも頼らずに生計を立てていたのだと聞いています。
それがようやく一年ほど前に帰って来て、城での所属希望も出しているのだとは知っていましたが、成人の儀から四年間も旅に出ていたためにいきなり城勤めはさせられません。そこでまずは見習いということで、城中のいろいろな部署から使いっぱしりをさせられていたのでした。城勤め見習いのスペインはとても多忙で、ロマーノの前に姿を見せたのは謁見の間で帰還の挨拶をした時ぐらい。あとは顔も見せませんでした。おかげでロマーノは五年近くスペインとは話もしていない状態です。
そんな彼との二人旅は違和感だかけでした。まず何を話せばよいのかもわかりません。スペインが何を考えていて、どういう気持ちでローマの命令を聞いたかなんて想像もつきませんし、そもそもこの旅自体に不安がいっぱいです。
そして何より、成長したスペインはロマーノの記憶にある彼よりも背が伸び、ずっと大人びていて知らない人のようでした。

「ちくしょーなんで俺が男と二人旅なんか……」
「ロマーノ王子、今日泊まる宿ですが」
「……」
「王子?」
「……王子って言うな。お前に言われると気持ち悪ぃぞ」

スペインには敬語も似合いません。じとーっと下から睨み上げると、虚を突かれたスペインは一瞬きょとんとしたあどけない表情を見せました。

(あ、この顔……)

その顔は昔、ロマーノがスペインにイタズラを仕掛けた時の反応とよく似ていて、全然知らない誰かのようにすら思えた目の前にいる男の中にスペインの面影を見た気がしました。

「そりゃあ王子って呼ぶし、敬語も使うやろ。ロマーノは俺の仕えるべき主なんやから」

しばらくきょとんとしていたスペインでしたが、やがて相好を崩し眉を下げて笑いました。

「はあ? お前が仕えているのは国だろ。俺が国王だって言うならまだしも」

そう、いくらロマーノが王子様だからと言っても国を取り仕切っているのは国王です。ロマーノの世話係だって主はローマ。なのに大げさな言い方をするスペインに思わず眉をひそめてしまいました。
しかし居心地悪く肩を竦めたロマーノにスペインは困ったように笑うだけでした。

「とにかく落ち着かねぇから今まで通りでいろよ」
「……しゃあないな。わかったわ、ロマーノ」

少し強引かと思いましたが、スペインはロマーノの願いどおり昔のように接してくれるようになりました。
名前で呼ばれ、友達のように砕けた会話をしているとすぐに軽口も思い出します。

「ふん! まあ、お前がどうしてもって言うなら特別に様付けで崇めさせてやる」
「あらま腕なんか組んで偉そうにしちゃって」
「でも王子じゃなくて帝王とか皇帝とか、強そうなのが良いぞ」
「ロマが強いのなんてポーカーぐらいやん。しかもイカサマの」
「い、イカサマなんてしてねぇよ!」

昔はずっと一緒にいて遊び回っていた仲です。そうやって話をしていると、ロマーノにとってスペインが心を許せる友人だったことに気づきました。そう言えば、スペインがロマーノに何の相談もなく旅に出たので、とてもさみしかったことを思い出しました。あの頃はずっといつまでもこうやって他愛のない話をして、時々は馬鹿なことをやったりふざけたりしながら一緒にいられるものだと思っていたのです。それが急にいなくなって、少し裏切られたようなショックを受けました。
それがこうやって数年間のブランクも感じさせないほど親しく話せるようになるなんて。この旅はローマから下された思いがけない課題であり、しかもロマーノの結婚のかかった大事なものでしたが、だんだん楽しくなってきました。

「やっぱ手っ取り早く金を貯めるにはカジノか……?」
「アホ! そんな不確実なことやっとったらいつまで経っても金貨1000枚も貯まらへんよ」
「え、じゃあどうすりゃ良いんだよ」
「これだけの額やし正攻法じゃ無理や。貿易しかないと思う」
「貿易……? でも俺、難しいこととか全然わからねぇぞ…」
「大丈夫やって! 俺に任せとって」

スペインはとても頼りになりました。彼はローマの見立て通り、自分でお金を稼ぎ、宿を取ったり良い情報を仕入れたりすることができます。旅慣れたスペインは慣れない生活で心細いロマーノには頼もしく見えたのです。
スペインの金貨1000枚作戦は異国からやって来るキャラバンから珍しい品物を安く買い付けて、それがあまり流通していない大都市まで持って行き、できるだけ高く売りさばくといったスタンダードなものでした。定番ではあるもののスペインの確かな情報収集能力のおかげで効果は絶大、二人はコツコツと取引金額を大きくしていきました。

「この調子やったら何とか金貨1000枚は貯められそうやな」

そうしてロマーノは自分がスペインに惹かれていることにも気が付きました。

「ロマーノ、俺の思っとったよりも何倍もよう働いてくれるから順調やわ。そんなに結婚したい人がおるん?」

しかしスペインはローマに命じられたからロマーノに付き従ってくれているだけで、彼は無事にロマーノが課題をクリアし別の誰かと結婚することを望んでいるのです。何の翳りもない屈託のない表情で、どんな人がタイプなん? と聞いてくるスペインに愕然としました。

「あ……いや、俺は……」
「昔っから可愛え女の子が好きやったもんなあ。ロマーノと結婚する子はきっととびきり美人なんやろな」

無邪気にそう言ってくるスペインにはロマーノに対する特別な感情が窺えません。むしろ良い結婚になるようにと応援してくれるのです。スペインには悪気がないどころかロマーノのためにといろいろ手伝ってくれているのに、それを見ていると、順調だった旅が途端に陰鬱なもののように感じてきました。
商売は上手くいっているのに日に日に元気をなくしていくロマーノをスペインはとても心配してくれました。売上とは別のスペインの個人的なお小遣いから、ロマーノが好きそうな南国のフルーツや異国の美しい布を贈ってくれたり、旅芸人がやっているサーカスを見せてくれたりしましたが、そうやって彼の優しさに触れるほど想いが募り苦しくなっていきます。

「ロマーノ、ちょっとは食べなあかんで?」
「…食欲出ねぇんだよ」
「せやけど…今までそんなことなかったやん。食い意地も張ってるぐらいやったのに。急にどうしたん?」
「……」

今はそうやって気にかけてくれるスペインの気づかいすらロマーノの胸を焦がし、絶望へと突き落としていきます。

「ロマーノ…もうちょっとで金貨も貯まるし、そうしたら好きな子と結婚できるんやで。せやからもう少しだけ頑張ろ」

まるで子どもに言い聞かせるような優しい声色。ロマーノが彼にどんな感情を抱いているのか、想像もしていないような慈しみにあふれた優しさ。スペインのそういうところが好きなのに、今はそれが辛い。泣きそうになるのを必死で堪えていると、スペインが追い打ちをかけてきました。

「それともホームシックにでもなってもうた? …ローマ王には黙っとくから、その……好きな人と会ってくる?」
「…………ね、よ」
「ん?」

勢い良く顔を上げると、ついにロマーノの瞳からはぽろりと大粒の涙が零れ落ちました。しかし構わずスペインの胸ぐらをつかんで怒鳴りつけます。

「わかったような口きいてんじゃねぇよ! 俺が誰を好きかも知らないくせに……ッ! なん、で、そんな応援なんて、できるんだよ!!」
「ろ、ロマーノ? 急にどうしたん? 俺がお前のこと応援するのは当たり前やんか、やって俺たちは……」
「お前が俺についてくるのは俺が王子だからだろ…っ! 国が大事だからここにいるんだろ! それなのに、なんでそんな期待させるようなこと言うんだよ……ッ!」

泣きじゃくりながら叫ぶロマーノにスペインが呆然とした顔を見せました。
一度、堰を切った感情は留まることができません。ロマーノは込み上げてくる激情のまま叫び続けました。

「それとも何か? 友達もいない王子にそうやって友達ヅラするのも臣下の勤めなのかよっ! だとしたら大した忠誠心だな!」
「……っ!」

スペインが一瞬傷ついた目をして息を呑みます。その表情にロマーノが怯む間もなく、彼は自分の胸ぐらをつかむロマーノの手首を握りしめました。

「お前がそれを言うんか?! 俺の忠誠心が国へ向かっていると? 本気でそう信じてるん?」
「そりゃ……だって、実際そうなんだろっ!」
「お前のほうこそ俺が誰を好きかも知らへんくせに、ようそんなこと言えるわ。……俺が誰のためにこんな命令付き合ってるのか、そんなこともわからへんのやろ」
「なっ、何を言って…」

感情的なスペインの言葉に、今度はロマーノが呆気にとられる番です。目を見開いて後ずさりましたが、手を取られたままだったためほとんど下がることはできませんでした。
どういうことなのかと視線でスペインに問うと、彼は自嘲気味に笑ってロマーノを捕まえているほうの手とは逆側の手で前髪を掻き上げました。

「……はは、言うてもうた。売り言葉に買い言葉で、俺ってほんま最低やな」
「スペイン……?」

スペインはゆっくりと瞬きをひとつすると、覚悟を決めたように切り出しました。

「……この命令を受けた時、ほんまは邪魔したろうと思ってたんや。ロマーノが結婚なんてできへんように時間を稼ごうと……ほんで婚約者との話も破談になったらええわ、ってな。でもロマーノがあんまり一生懸命やから、それを知って邪魔するなんて俺には到底できへんかった。お前さえ幸せならそれでええわって、そう思った。思おうとしたのに……」

思いがけない彼の告白にロマーノの胸が高鳴りました。

「スペイン、お前……それって、まさか」
「俺は…ロマーノのことが好きなんや……。ロマーノのために役立てる男になりたくて旅に出たし、ロマーノのそばで働かせてもらうために城勤め見習いも頑張ってきた」
「そう、だったのか……」
「俺は……ロマーノのことを愛してる」

スペインの告白は真剣で、真摯で、聞いていると胸がぎゅうっと締め付けられて切なくなるようなものでした。しかしロマーノは幸せでした。スペインにそういう風に想われて嫌なわけがありません。

「……俺もだ、スペイン。俺もお前のことが好き」
「ロマ……」
「だから、その……金貨を1000枚貯めて、俺と結婚してくれ」

その瞬間、スペインの瞳からも涙が溢れ出ました。ロマーノはさっきからずっと泣きっぱなしだし、スペインも静かに泣いています。二人とも激情の渦と、好きな人と想いが通じ合った幸せで涙が止まらなくなったのでした。

そうして金貨1000枚を貯めたロマーノは城に帰るとローマに願い出て、スペインと結婚することにしました。ローマは元々、金貨が貯まらなかったらスペインと結婚させるつもりだったと言い二人を驚かせましたが、ローマに言われずともちゃんと大事なものを見つけ手に入れたロマーノを誇りに思うと大いに喜んだのでした。
〜happyend〜

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